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【識者の眼】「医療情報共有の基盤整備を」小倉和也

No.5092 (2021年11月27日発行) P.56

小倉和也 (NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)

登録日: 2021-11-10

最終更新日: 2021-11-10

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世界的に医療情報共有の動きが加速している。過去の病歴や処方歴・検査結果などの情報を、医療機関などが必要に応じて共有したり、本人がポータルサイトなどを通じて開示し共有できるようにする取り組みが、方法は様々だが、地域単位や国単位で進んでいる。そのための法整備や予算措置を何年もかけて進めてきた国々では、コロナ禍を経て一気に加速させようという動きが広がり、準備が進んでいなかった国でもその必要性が認識されて、早急に進めようという機運が高まっている。

コロナ禍において、このような医療情報の共有が命に関わる問題だということが如実に示された。多くの患者が、これまで受診歴のない医療機関で診断や治療を受けることとなったが、しばしば保健所からの情報や他の医療機関での受診情報の共有が滞り、患者も医療者も困難な状況に陥った。「個人情報保護」という言葉が、個人を守ることではなく、ややもすると関係者のリスク回避のための口実と思われるようなケースもあり、情報の取り扱い方を見直す必要性があらゆる場面で実感された。

オンライン診療を初診で行う場合でも、必要な情報共有を前提とすることが検討されている。しかし、そもそも対面診療においても、日本では紹介状がなければ冒頭に示したような情報がないのが当たり前である。電子カルテの共有やシステムの連結などにより確実に確認できる国の医師からすれば、日本の初診は対面でもリスクが大きいとみなされるだろう。情報がないから制限するというよりは、そのような情報が初診でも確実に確認できる基盤を整え、オンラインだけではなく対面でも、より安全に初診から診療できる体制をつくる方向で考えることが適切であろう。世界の潮流は確実にその方向に向かっている。

必要な時に必要な情報を本人の安全と健康のために確実に用いることができる体制づくりには、法整備や財源確保、合意形成や技術的な課題の克服など様々な課題があるだろう。しかし、各国の動向や技術の進歩をみると、決して不可能なことではない。コロナ禍で数々の尊い命を失った教訓を無駄にせず、今すぐ社会全体で取り組むべきと考える。

小倉和也(NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)[安全に初診から診療できる体制]

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