株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「外来機能報告と外来機能分化」栗谷義樹

No.5093 (2021年12月04日発行) P.58

栗谷義樹 (山形県酒田市病院機構理事長)

登録日: 2021-11-25

最終更新日: 2021-11-25

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

地方病院は過疎化と医療需要減少による業務量縮小、医師、看護師をはじめとする担い手不足にこれまで悩まされてきた。加えて当面の課題として来年度の外来機能報告制度と24年施行の医師の働き方改革がある。地方は地区医師会自体も高齢化しているが、当地域でも医師会A会員の平均年齢は95〜21年の6年間に8歳上昇した。診療科によっては基幹病院外来がかかりつけ医機能を果たさざるをえない現実も出はじめている。外来機能報告制度は本年5月成立の改正医療法で創設されたが、外来医療の機能明確化、連携を強化することで今後の方向性を示したことは理解する。ただ、医療資源の豊富な都市部と基本構造がこれまでと激変する地域が同一に適用されることには、いささか懸念を覚える。本制度は地域医療構想病床機能報告の外来版となるが、かかりつけ医機能は総合診療機能とほぼ同一と考え、現場もこれまでの専門性と総合診療の隙間を埋めていく工夫が求められており、実際の合意形成にはもう少し時間が欲しいところだ。

一方、かかりつけ医の専門性についてはその機能についてまだ整理されていない部分もある。その一つは、診療所がどこまでの治療機能を持つかだ。消化管のポリープ切除や粘膜切除などをはじめ診療所での治療には様々の分野があるが、基幹病院の診療科より診療所医師のほうが高いレベルのスキルを持つことは往々にしてありうることである。

しかし、どんなにレベルが高くても重大な合併症、後遺症を起こすリスクは避けられず、合併症リスクへの対応能力をどこまでフルセットで持つべきか、は議論と合意が必要である。合併症が発生したら基幹病院に紹介すればよいというだけの話では多少違和感を覚える。このことは病院の機能分化にも通じる話になるが、外来機能を分化するのであれば、整理されていない外来治療の機能分化も議論が必要ではないだろうか。

栗谷義樹(山形県酒田市病院機構理事長)[外来機能]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top