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【識者の眼】「非感染性・慢性疾患の疫学者が語る『オミクロン株と日本の第6波』」鈴木貞夫

No.5101 (2022年01月29日発行) P.54

鈴木貞夫 (名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野教授)

登録日: 2022-01-18

最終更新日: 2022-01-18

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アフリカ諸国で感染爆発した新型コロナウイルス・オミクロン株は、西欧、北米に広がり、日本では沖縄県、山口県の米軍基地から瞬く間に広がった。オミクロン株の感染爆発と置き換わりで日本の第6波が始まり、新型コロナの感染状況、対策などは新たなフェイズに入った。オミクロン株については、未知の部分が多いが、感染力が強く、ワクチンの有効率が下がるという面と、重症化リスクはデルタ株より低いという面が明らかになってきている。

世界的に見ると1)、感染はアフリカから、西欧・北米に広がり、現時点では、南米(アルゼンチン)やアジア・オセアニア(オーストラリア、フィリピン、インド、日本)、東欧(モンテネグロ)、中東(イスラエル)のいくつかの国で感染が急増している。まだ新規感染者が減少基調の国もかなりあるが、オミクロンフリーはきわめて困難で、どの国においても、感染増加は時間の問題と思われる。なお、感染が先行した南ア共和国やイギリスでは、新規感染者は減少が始まっている。

日本国内でも2)、感染は最初の感染地の沖縄県、山口県から、近隣県や大都市に広がった。日本全体で見ると、感染は西から東に進んでおり、現在感染者の少ない東日本や北海道でも今後急速に感染者が増加することが懸念される。

実効再生産数という指標は、1人の感染者が平均何人にうつすかという意味を持つが、これが1を超えると感染は増加し、1を切ると収束に向かう。ここ数日の日本のこの指標は5を超えており、世界でもトップクラスである。新型コロナの実効再生産数(簡易法)の場合、平均世代時間5日として計算されるため、日本の数値は、5日で5倍超という感染爆発を示している。実効再生産数は比なので、日本の高値は、感染者がゼロに近かった年末からの急増を反映した面もあり、ここまでの高値は長くは続かない。しかし、これが1を切るまでは、感染者増加は止まらないので、地道な予防活動の継続が必要である。

日本ではこれが第6波となる。これまでの日本の対新型コロナ政策は、どちらかと言えば、臨機応変な対応と現場力で乗り切ってきたような印象がある。これから先は、それに加えて、医療、ワクチン、検査などに対する「方針」や「哲学」といったもの、さらには出口戦略についても議論されるべきであろう。オミクロン株が、コロナ禍に対して、よい意味で転換点となってくれることを願っている。

【文献】

1)Our World in Data「country profiles」.

   [https://ourworldindata.org/coronavirus#coronavirus-country-profiles]  

2)NHK特設サイト:新型コロナウイルス、都道府県別の感染者数.

   [https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data/]   

鈴木貞夫(名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野教授)[新型コロナウイルス感染症]

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