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【識者の眼】「2022年度診療報酬改定:外科系技術の評価について」岩中 督

No.5110 (2022年04月02日発行) P.59

岩中 督 (外科系学会社会保険委員会連合会長、地方独立行政法人埼玉県立病院機構理事長)

登録日: 2022-03-15

最終更新日: 2022-03-15

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中央社会保険医療協議会(以下、中医協)診療報酬調査専門組織医療技術評価分科会(以下、医技評)が本年1月18日に開催され、外科系学会社会保険委員会連合(以下、外保連)を通して提案された未収載技術148件中56件(採択率38%)、既収載技術212件中51件(採択率24%)が採択された〔提案技術全体の採択率はそれぞれ284件中77件(同27%)、449件中98件(同22%)であった〕。

外保連では、診療報酬表収載のすべての手術に対して、日本外科学会の協力のもと4年に一度手術時間などを実態調査し、外保連手術試案の精緻化を行っている。それ故医技評では、外保連で審議後の提案は全体の採択率より高く評価されることが多い。今回の改定は厳しい財源のため例年より既収載技術の採択率が低かったものの、概ね納得できる評価であったと考える。また外保連では、外保連手術試案と実際の診療報酬に大きな乖離のある手術を中心に増点要望を行っているが、今回改定においても103件の手術が約10〜15%増点されたことも併せて評価したい。

また2018年度改定から、DPCにおける請求の際に外保連手術試案コードSTEM7の提出が義務化されたが、私が主任研究者の厚生労働行政推進事業の研究班で、一部領域手術のSTEM7と手術診療報酬Kコードとの突合を行い、Kコードの今後の精緻化や合理化の可能性を示すことができた。今後の改定に向け領域を順次拡大し、科学的根拠に則った手術診療報酬の在り方について議論を重ねていきたい。

さらに同研究班で、National Clinical Databaseに登録されたデータを用いて、胃がん、直腸がん、食道がんのロボット支援手術の施設基準、特に術者要件の必要性を検討した。その結果、経験が少ない術者には、難易度の低い術式や病期の早い悪性腫瘍の手術を担当させるなど、各施設の診療現場でプロフェッショナルオートノミーが適切に働き、安心・安全な手術が提供されていることが明らかとなったことから、これらのロボット支援手術の術者要件が緩和された。

今回の改定では、医療技術、特に外科系の技術の保険収載に関しては、科学的根拠がより重要視される傾向が明らかとなったことから、外保連としてはビッグデータの活用、ガイドラインの改訂などに積極的に取り組むよう、各学術団体に推奨していきたい。

岩中 督(外科系学会社会保険委員会連合会長、地方独立行政法人埼玉県立病院機構理事長)[診療報酬改定]

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