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【識者の眼】「試行錯誤してセルフコントロールを」山本晴義

No.5115 (2022年05月07日発行) P.63

山本晴義 (労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)

登録日: 2022-03-30

最終更新日: 2022-03-30

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何かをコントロールできないことに悩んでいる人が多い。アルコールがやめられない、ゲームやスマホをやりすぎる、運動が続かない、怒りがおさめられないなど、我々の日常生活にはコントロールが必要な場面が満ち溢れている。

望ましくない衝動や、抑えなければならない感情や思考が起こってしまうときに、自分の意思で自分自身の反応をより良い方向に変えていくのがセルフコントロールである。短期的利得が長期的損失あるいは長期的利得と対立する状況下において、長期的な結果を選ぶ能力ともされている。

しかし、頭ではわかっていても、セルフコントロールは難しい。

たとえば、夏までに痩せるという大きな目的と、目の前にあるケーキを今すぐ食べたいという小さな目的があり、それぞれの目的を満たすための行動は、当然ながら相容れずに葛藤が生じる。食べないほうがいいことはわかっているけれど、どうしても食べたいという強い葛藤である。そして、その欲望や誘惑に負け「自分はなんでダメなんだろう」と落ち込んだり、自分を責めることもある。

セルフコントロールのポイントは、やる気があれば目標達成ができるということではなく、自分自身に負担をかけすぎることなく、目標に向けた行動を自然に行えるような環境や状況をつくり出すことにある。

たとえば、夏までに痩せるという漠然とした目標ではなく、1カ月で2kg痩せるとか、毎日○カロリー以内にする、といったように目標を小さく分けることが大切である。着実にステップアップしているという実感がモチベーションの持続にもつながる。

また、葛藤を減らす環境をつくることも有効である。ダイエット中ならお菓子を買わない、勉強中はスマホを別の部屋に置くなど目の前にあるものに惑わされないように、大事な場面では思い切ってシャットアウトすることがおすすめである。

そして、自分に負担をかけすぎないようにしよう。合理的な行動のためにいつも我慢するのはかえってストレスが高まるし、時々ガス抜きして一定の満足が得られることで、その後のセルフコントロールがしやすくなることも期待できる。いわばセルフコントロールは、筋肉のようなものであるという。感情的なものか行動的なものかに問わず、エネルギーのように限られた資源であり、それを過度に使用しすぎると短期的には枯渇してしまう。しかし、それを何度も繰り返していくと強化されて容量が増えるのだという。こうした知識も活かすこと、目標達成にはやる気だけではなく、やる気をうまく行動に移せるような環境の整理が必要なことを改めて認識し、試行錯誤していくことがセルフコントロールの近道になるだろう。

山本晴義(労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)[長期的な結果を選ぶ能力]

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