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【識者の眼】「メンタルヘルスの現場から見た労働市場(コンサルの世界)」岩﨑康孝

No.5116 (2022年05月14日発行) P.60

岩﨑康孝 (四谷いわさきクリニック院長)

登録日: 2022-04-21

最終更新日: 2022-04-21

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町中で開業してるため、時々「コンサル」の方がお見えになります。

ただし、「コンサル」と聞いても何をなさっている方なのかは実はわかりません。もう一歩踏み込んでお伺いする必要があります。

すると、依頼された会社の「今後の経営戦略作成」「中期経営計画のたたき台作成」等の非常に漠然とした内容を提供する仕事。「M&Aの仲介」「人事システムの改善」「生産過程の合理化」といったまさにコンサルのイメージの仕事。さらには、「市場調査」「法改正に伴う対応」「会社のコンピュータシステムの入れ替え」等、特定の業務のアウトソーシングや請け負いと言ったほうがよいもの。中には「何でもいいから、○○国(外国のある国)でできる新しい仕事を考えて来い」と言われる方まで多様です。

特に20代の「コンサル」の方にお伺いすると、非常に長時間働いています。午前2時、3時、4時まで働いて、朝は8時から始業です。短期間で膨大な業務を処理していることが共通点のようです。

労働基準法の規制の埒外、「裁量労働」なのかもしれません。来院なさる方には、抑うつや不安症状はあります。それ以上に、非常に疲れていることが多く、喋ることさえ「億劫」な状態が目立ちます。また、「お金はたくさんもらっているので、お金よりも休みが欲しい」と言います。最近のコンサルは、「ホワイト企業になった」と言われていますが、労働時間からは違和感があります。

診療場面では、背景に大きなメンタル疾患がない場合、休養してしばらくすればすっかり元気になります。初診でお目にかかった時とは別人という印象です。興味深いことに、その後、あまり時間をかけずに退職し、あっという間に新しい仕事を見つけて転職します。

お伺いすると、「コンサル」で長く働くことは前提としていません。他の業界も20代の方の転職は珍しくありませんが(※国の統計では20代の方の年間離職率は20〜30%です)、そのスピーディーな経過が特徴です。

御本人の転職への認識に加えて、新たに採用する会社も、「コンサル」で一定期間働いていた方に対しては、「職業人としての資質が高いと推測されること」「ハードワークに耐えられるであろうこと」「いろいろな仕事を見てきた経験」等から、比較的採用しやすいと判断するのではないかと思います。

次回は「大学職員の世界」についてお伝えします。

※政府統計:2020年雇用動向調査結果の概況.

 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/21-2/dl/gaikyou.pdf

岩﨑康孝(四谷いわさきクリニック院長)[メンタルヘルス][労働市場]

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