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【識者の眼】「コロナとの共生を目指した社会的チャレンジが始まった」北村明彦

No.5138 (2022年10月15日発行) P.64

北村明彦 (八尾市保健所健康まちづくり科学センター総長)

登録日: 2022-10-05

最終更新日: 2022-10-05

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新型コロナウイルス感染症の全数把握の重点化が9月26日に開始された。すなわち、医療機関からの発生届の対象者を①65歳以上、②入院を要する人、③重症化リスクがあり新型コロナの治療が必要と判断される人、④妊婦、の4類型に限定し、それ以外の人は、大阪の場合は「陽性者登録センター」に陽性者本人がWeb登録等を行う仕組みである。

保健所は、発生届が出された陽性者に対してのみ連絡をとり、療養に際しての手続きをとることになるものの、自宅療養者の症状が急変した際には、発生届が出されたHER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)登録者、「陽性者登録センター」登録者、HER-SYSにも「陽性者登録センター」にも登録されていない陽性者のそれぞれに対し、保健所が救急の受診調整を行う体制に変わりはない。

「陽性者登録センター」にWeb登録しない陽性者については、感染拡大防止の観点からの注意喚起も必要である。Web登録しない陽性者には、無症状またはごく軽症のために検査キットによる自己検査で陽性となったケースが多く含まれると想定されるが、上記の4類型であっても診療・検査医療機関を受診しなければ、HER-SYSに登録されず感染の実態は把握されない。そうした「隠れ」陽性者に対しては自粛要請等の個別の情報伝達はできないため、無症状であっても強い感染力を有する事例がしばしば経験されることを鑑みると、「隠れ」陽性者自らが適切な自粛行動をとらなければ感染拡大につながることは明白である。

登録システムの変更とともに、人々の自主的な行動制限につながる情報源の一つであった市町村別の感染者数の比較公表はなくなった。9月7日から施行されている療養期間の原則7日間への短縮とそれに伴う8日目以降の残存リスクへの懸念、さらには10月11日からの入国時検査の原則撤廃と「全国旅行支援」等々、感染症予防の観点からみると大きなチャレンジに踏み切ることになる。こうしたわが国の現状にあたり、新型コロナウイルス自体の沈静化という望みにすがらざるをえない心持ちになっているのは私だけであろうか。

北村明彦(八尾市保健所健康まちづくり科学センター総長)[新型コロナウイルス感染症]

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