私はこのたび、一般社団法人全国医師連盟の代表理事に就任した。実は昨年会員の選挙で当選していたのだが、手続きが最近ようやく済み、晴れて代表となったのだ。
全国医師連盟、略して全医連は2008年にできた勤務医主体の団体だ。大野病院事件や医師の働き方の問題が大きく取りざたされた当時、ネット上で発言していた医師たちが集まり、勤務医の医師会を目指して誕生した。
当時私は大学病院の勤務医として働いていた。医師不足の中、病院に泊まり込み働くなど苦しみ、こんな働き方続けられないよなぁという漠然とした思いを抱いていた。そうした中全医連のニュースを聞いて、会員として参加したのだ。
その後理事になるなど、会に関わり続けてきたが、長らく代表を務めた中島恒雄先生の跡を継ぎ、代表になったのだ。
正直、代表になるにはふさわしくないのではないかと躊躇する気持ちもあった。病理診断医であり、医師を代表するにはマイナーすぎる。しかも勤務医を辞めてフリーランスとなっていたので、勤務医の医師会の代表としては役不足ではないか……。
しかし、逆に言えば、フリーランスであるからこそ、自由にものが言えるとも言える。多少ではあるが情報発信力もある私が勤務医の皆さんの盾、広告塔になればと思い決断した次第だ。
2024年4月からの勤務医の労働時間上限規制導入など、医師の働き方改革は重大局面を迎えている。しかし、勤務医が政策に影響を与える手段は限られている。こうした状況のなか全医連の役割はますます増していると思う。
しかし、設立から15年余り、全医連の会員数は減りつつあり、影響力に限りが見えているなど課題も抱えている。特に、若い医師たちへのアピールは不足しているように思う。
果たして、こうした状況の中、異端の病理医に何ができるか。責任は重大だ。どうする全医連? 一人では何もできない。ぜひ多様な方々と協力し、進んでいきたい。
榎木英介(一般社団法人科学・政策と社会研究室代表理事)[全医連]