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【識者の眼】「(患者と医師の)ヘルスリテラシーのギャップについて」樫尾明彦

樫尾明彦 (給田ファミリークリニック)

登録日: 2025-03-03

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前稿(No.5264)では、患者さんのヘルスリテラシーについて調べてみましたが、我々、医療者のヘルスリテラシーはどうでしょうか。

日本の文献は見つからず、海外の文献(2015年)では、若い医師のほうがインターネットを活用する機会が多かったとされています。かつては、最新の医学知識を得るためには、大学や図書館で紙の文献を探す必要がありました。しかし現在では、インターネット経由で最新文献(全文参照が有料の場合もありますが……)も比較的容易に調べられる時代になりました。

また、2020年の文献1)では、海外の医師は、同僚との相談、医学雑誌、Webサイトの順に、情報を調べる傾向が指摘され、教科書やPubMedなどの一次文献を参照する時間は相対的に少ないとの結果でした。筆者自身の現状を考えても、その通りかも知れません。

患者と医師のヘルスリテラシーのギャップを埋めるには

前稿で調べたように、主にテレビで情報を得ている患者さんと、医師の情報検索方法にはギャップがありそうです。患者さんが、自身で得た情報の信頼性をどのように判断しているのでしょうか。たとえば、テレビやインターネットで、医師が解説している内容について、患者さんはそれをそのまま信じるのか、それとも疑問があれば自ら検索して確認するのか……、ここに患者さんと医師との間で、ヘルスリテラシーの違いが生じる可能性があります。

2005年の文献2)では、医師の説明を理解できたかどうか、患者さんに確認、示してもらうことも一法と提案されていますが、診察時間がそこまで十分に確保できないと、それは容易でないかもしれません。

2024年の日本の文献3)では、患者さんのヘルスリテラシーが低い要因の1つとして、「家庭医(Family Doctor)を持っていなかった」ことが挙げられています。日本では医療機関へのフリーアクセスが可能であるため、患者さんは地域に関係なく自由に医療機関を選ぶことができます。しかしその一方で、特定の家庭医に継続的に通う必要性を感じにくいことが指摘されています。

日本でも2021年に誕生した総合診療専門医は658名(2024年4月現在)、日本プライマリ・ケア連合学会が認定している家庭医療専門医(今後は新家庭医療専門医に移行の可能性あり)は1229名(2025年1月現在)となっています。患者さんと医師とのヘルスリテラシーのギャップを埋めるためにも、いわゆる「家庭医」が増え、認知度がさらに広まり、患者さんと医師が、より円滑なコミュニケーションを築けるような未来を期待したいと思います。

【文献】

1)Daei A, et al:Int J Med Inform. 2020;139:104144.

2)Safeer RS, et al:Am Fam Physician. 2005;72(3):463-8.

3)Yumiya Y, et al:Health Lit Res Pract. 2024;8(3):e175-83.

樫尾明彦(給田ファミリークリニック)[ヘルスリテラシー][ギャップ

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