山口育子 (認定特定非営利活動法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)
登録日: 2025-04-22
最終更新日: 2025-04-18
厚生労働省をはじめとする国の審議会や検討会に出席していると、ここ数年、政策決定のプロセスが歪んでいると感じることが増えてきました。政府の方針として決まった問題が議題として降りてくることが増え、ステークホルダーの委員で話し合っても「答えありき」になっていることがあるのです。もちろん、多くの審議会、検討会では真摯に議論がなされています。一般的には「国の会議なんてシャンシャン会議」と誤解されていることが少なくないようですが、実際にはかなり真剣な意見交換が行われているのです。それなのに、上述したような歪んだ状況が生じています。
1例を挙げると、1年半ほど前、健康・医療・介護ワーキング・グループが開催され、医薬品の販売方法に関する検討会で議論されている内容について、厚生労働省に説明を求めるための会議がオンラインで行われました。その一部に参考人として出席し、コメントを求められたのですが、その発言はスルーされ、その後、厚生労働省の事務局から不備を指摘する発言が相次ぎました。その多くは、「エビデンスがない」「オンラインやインターネット販売を阻害している」などという内容で、私たちの議論の方向性を否定するものでした。非常に上から目線で、中には嘲笑うような態度で意見する委員もいて、私は非常に疑問を覚えました。
その後開催された医薬品の販売制度に関する検討会に、ワーキング・グループから誰宛とも記載されていない意見書が提出され、内閣府の事務局から意見書に基づいた説明がありました。その意見書も非常に乱暴な内容で、意見書の体をなしていませんでした。
私はオンライン出席だったのですが「当検討会で真摯に議論している内容について、頭ごなしに否定する失礼な意見書に違和感を覚えています」と伝えた上で、当検討会とワーキングの関係性、意見書に書かれている指示の権限を確認し、「安全よりも利便性、アクセス、販売業者側の利点などを重視するような意見が多数みられますが、それによって問題が生じた場合、どのように責任をとるおつもりなのでしょうか。そもそも責任がとれるのでしょうか」と問いかけました。それに対して、「ワーキング・グループでは厚生労働省に意見を述べることはできるが、検討会に指示するものではない。責任はとれない」との回答でした。
規制改革というと、古い悪習を打開するよいことだと受け止めがちです。しかし、医薬品のように使用の仕方によっては毒物になるものは規制が必要なのです。ましてや、濫用のように目の前に深刻化している問題があるのに、何もせず手をこまねいていてよいのでしょうか。何の責任もとらずに批判ばかりするのが本来の規制改革ではないはず、と私は思っています。
山口育子(認定特定非営利活動法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)[規制改革][ワーキング・グループ]