No.5000 (2020年02月22日発行) P.49
峰松一夫 (公益社団法人日本脳卒中協会理事長、国立循環器病研究センター名誉院長、医療法人医誠会臨床顧問)
登録日: 2020-02-20
2018年12月10日、「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」いわゆる「脳卒中・循環器病対策基本法(以下、本基本法)」が成立し、2019年12月1日に施行された。わが国における脳卒中、心臓病その他の循環器病対策の進展が期待されている。
本基本法成立には、日本脳卒中協会(以下、本協会)が大きく貢献した。2008年本協会内に「脳卒中対策検討特別委員会」が設置され、そこでの議論を経て2009年に「脳卒中対策基本法」法制化運動がスタートした。2度の政権交代、東日本大震災などの影響で作業は難航した。2014年の参議院厚生労働委員会で法案が発議されたものの、同年秋の衆議院解散で廃案になった。
個別疾患の基本法制定への反対意見、日本循環器学会(以下、日循)からの申し入れ等もあり、2016年に本協会と日循とが事務局機能を分掌する「脳卒中・循環器病対策基本法の成立を求める会」が発足した。以後、ホームページ開設、3度の国会集会、関連団体や各政党、議員への陳情等が精力的に行われ、本基本法成立に至った。
本基本法の基本的施策として、①啓発と予防の推進、②発症時の搬送および受け入れ医療機関体制整備、救命救急士等への研修機会の確保、③専門医療機関の整備、④後遺症を有する患者の生活の質の向上、⑤保健・医療・福祉サービス提供機関の連携協力体制整備、⑥保健・医療・福祉業務従事者の育成と質の向上、⑦情報の収集・提供体制整備、患者相談支援の推進、⑧研究推進─が、また附則として⑨失語症等の脳卒中後遺症を有する者への施策─が明記された。
現在、厚生労働省に「循環器病対策推進協議会」が設置され、「循環器病対策推進基本計画」を策定中であり、本年6〜7月頃には基本計画が閣議決定される。その後各都道府県でより具体的な「循環器病対策推進計画」が策定され、2021年度より計画が実施されるであろう。作業の進捗を見守りたい。
峰松一夫(公益社団法人日本脳卒中協会理事長、国立循環器病研究センター名誉院長、医療法人医誠会臨床顧問)[脳卒中]