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【識者の眼】「産業医のための一般企業で伝えておきたい新型コロナウイルス10の知識」和田耕治

No.5002 (2020年03月07日発行) P.60

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2020-02-26

最終更新日: 2020-02-26

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新型コロナウイルス感染症の拡大が懸念されています。感染拡大を防止するために、これまで明らかとなった新型コロナウイルス感染症の特徴を踏まえ、産業医が知っておくべき10の対策をお伝えします(2020年2月26日版)。

1. 感染者の半分ぐらいはほとんど症状がない。感染者の約30%は入院が必要ない「軽症」だが、発熱、だるさ、咳、食欲不振などの症状はそれなりにある。高齢者(特に70歳以上)が感染すると症状が重くなり、死亡リスクも高い。高齢者以外は死亡リスクは低い。

2. 感染拡大の場の傾向が明らかになってきた。腕を伸ばせば届くくらいの近距離で、一定時間の会話をし、多くの人が集まるところの感染リスクが高い。飲み会、立食パーティー、カラオケ、病院などが代表例。

3. 接触感染により広がる傾向があり、手洗いが特に重要。出勤時、外出時、食事の前に30秒程度石鹸を用いた丁寧な手洗いを「全員」が行う。

4. 今、一番恐れられている事態は、高齢者の重症患者が多数出ること。100人の高齢者の施設で感染が広がると(広がりやすい)、30人程度が発熱などの症状、そのうち10人程度が入院、そのうち数人が重篤な肺炎となるような事態が想定される。

5. 医療機関に感染対策が必要な重篤な肺炎が数人入院すると、医療提供が困難になる。人工呼吸器が不足する可能性もある。通常なら助けられる脳梗塞、心筋梗塞、交通事故などの対応も難しくなる。

6. 今は、できるだけ感染者の数を減らして重症者を増やさないことが大事。しかし、今後の見通しは不明で、社会活動の自粛をいつまで続けるのか判断が難しい。流行は年単位で続く見込みであるため、地域での流行をモニタリングする。

7. 企業で最も大事な対策は、①発熱者や症状のある人は職場に絶対に来させない。②職場に着いたら全員が手を洗い職場を汚染しない。③流行が確認された地域ではテレワークや時差出勤を配慮できるように体制の整備をする(または今から実施する)。④症状のある人(発熱者も含め)の人数を確認する、職場で熱を測定できるようにする。⑤事業継続計画を作成し、実行できるようにする。

8. 感染して発症するまでの潜伏期間は2日〜7日程度、長い場合は14日程度。同居の家族が感染したなどの濃厚接触者は、最後に症状のある人に接触してから潜伏期間が自宅待機になる可能性あり(最長21日とも考えられる)。

9. 症状があって(感染して)休んだ後に、復帰において医療機関に「陰性であることの証明」は求めない。陽性でも、検査の限界で陰性となっている可能性もある。発熱後(感染後)どのくらいたって職場に復帰させるかの根拠はない。念のため解熱後48時間ぐらいは空けたい。

10. 治療薬やワクチンは過度な期待はできない。まずは予防が重要。ただし、怪しい対策グッズには手を出さないようにしたい。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]


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