4月の忙しい中、ふと、「読み書きそろばん」という言葉が頭に浮かびました。なぜかわかりません。
少し調べてみますと、文字・文章を読むこと、内容を理解して文章を書くこと、および計算すること、ならびにそれらができる能力を持っていること。特に近世末期以降、初等教育における基本的な教育内容とされ、また初等教育で獲得させる基礎的な能力・学力をいうことのようです。日常社会では、ほとんど聞かない言葉となりました。
ただ私自身は、まずこの“読み”、にこだわりたいと思います。医師であれば、まず読むものとしては医学論文になると思います。いかに興味を持って、自然に、ハラスメントなく、楽しく、若い先生方に医学論文を読んでもらえるようにするか、できるか、これが教育者に求められていると思います。
では、どのようにすればできるでしょうか? 私自身が若い先生方に実行していることは、
1:できるだけわかりやすく、医学論文という科学的論文の構造や規則をマニアックなレベルまで解説します。そこに今まで淡々と医学論文を読むことがなぜ苦痛だったのかを明らかにして、楽しめるポイントを解説します。
2:そこから、原文を読むのではなく、なぜ他人がまとめた、またAIがまとめたものでは不十分なのか? 真実に近づけないのか? どこがダメなのかを明確に説明して、自分で医学論文を読むことの大切さを説明します。
3:実際に医学論文を書いてみて、そこから“読む”ことを改めて見つめ直してみます。
そんな感じでやっていますが、まだまだ十分とは到底言えません。
より現在の若い先生方の性格に合った、合理的な方法を模索していく必要があります。そういう意味で、まずは自分自身がこの“読む”をもう一度見つめ直して、正面から向かい合う必要があることを感じています。
ふと頭に浮かんだ「読み書きそろばん」……は、神様がもっとこの“読む”を大切にしなさい、と私に語りかけて下さったのだと思っています。
一二三 亨(杏林大学医学部総合医療学救急総合診療科准教授)[医学論文][読み書きそろばん]