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【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症:傷病手当を書くべし!」矢吹 拓

No.5012 (2020年05月16日発行) P.64

矢吹 拓 (国立病院機構栃木医療センター内科医長)

登録日: 2020-05-01

最終更新日: 2020-05-07

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)時代の風邪診療が難しい。熱がある、咳がある、喉が痛い…今までなら「風邪ですからゆっくり休んで下さいね」で終わっていた日常診療がもうそこにはないなあと感じる。まさにwithコロナ・postコロナ時代の風邪診療を考える必要があるだろう。

微妙な感冒症状で来院された患者さんに対して「あなたは新型コロナではないですよ」と断言するのはなかなか難しい。疑いが強ければPCR検査を行うなどの対応もあるが、多くはグレーゾーンであり、検査はできないことが多い。そもそもPCR陰性でも除外することが難しい疾患だ。COVID-19の可能性が残るなら、たとえ軽症であってもある程度の期間仕事を休むのが望ましいと考えるのが妥当なところだろう。米国疾病予防管理センター(CDC)の提案したCOVID-19患者の復職基準1)では、PCR検査を用いない場合に、①解熱剤を使用せずに3日以上解熱していること、②咳や息切れなどの呼吸器症状の改善、③症状出現から10日以上経過していること─を復職要件としている。すなわち10日は仕事を休む必要があるわけである。ただし、実際仕事をしている方が10日間休むことはなかなか難しい。診断書を書くことはできるが、そもそも給料が入らず死活問題になる可能性がある。

前置きが長くなったが、今回お勧めしたいのは「傷病手当金」の給付である。もともと怪我や病気で仕事を休む際に傷病手当金の給付というものがあったが、今回のCOVID-19においても傷病手当金の給付を受けることができる。厚生労働省は3月24日付けで「新型コロナウイルス感染症に感染した被用者等に対する傷病手当金の支給について」という通達2)を出しており、その中で「新型コロナウイルス感染症に感染したとき又は発熱等の症状があり当該感染症の感染が疑われるとき」にも傷病手当金を支給するとしている。原則業務できなくなった日を起算日として3日経過した4日目から就業不能期間の支給が可能である。また、支給額は直近の給与によって異なるが概ね通常の日当の2/3程度が支給される可能性が高い。注意点があるとすれば、会社に申告することで、患者本人が受ける可能性がある風評被害だろうか。

今、重要なのは無理をして仕事をすることではなく、家で休むことである。有症状者が自宅で安心して休むことができるように、全国の医療機関における適切な情報提供とサポートが重要である。

【文献】

1) Return to Work Criteria for HCP with Confirmed or Suspected COVID-19.

  [https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/return-to-work.html](2020.5.7アクセス)

2) 厚生労働省事務連絡「新型コロナウイルス感染症に感染した被用者等に対する傷病手当金の支給について」

  [https://www.mhlw.go.jp/content/000612737.pdf](2020.4.29アクセス)

矢吹 拓(国立病院機構栃木医療センター内科医長)[感染症][新型コロナウイルス感染症]

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