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【識者の眼】「日本の医療のビッグデータと活用」相原忠彦

No.5011 (2020年05月09日発行) P.45

相原忠彦 (愛媛県医師会常任理事)

登録日: 2020-05-12

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2月に国際通貨基金が対日本リポートを公表した。現状の少子高齢化が続くと、40年後にはGDPが25%以上減少するとし、現政策のままならば税収入が減少する一方、医療や年金などの支出が増加すると予想した。

「医療」は国民の健康と社会の安定のために必須であり、容易には削減できない。国民皆保険制度は国の財政力によって制限があり、すべての希望する治療を受け続けることはできない。日本の総医療費の対GDPに対する割合は諸外国に比較して低いとされるが、さらに医療資源の適正な活用を模索すべきである。

現代医療はエビデンス重視である。効果の判然としないものは排除されるべきである。客観的に日本の医療内容は世界の医療と比べて適当なのか?分析方法は種々あるとされるが、基となるビッグデータ整備の加速が必要であることは論を俟たない。厚生労働省も様々なデータベースを活用して、いかに最適な医療を最小の費用で賄うか努力をしている。当然、医療側(医師会)と保険者の意見も必要であるが、行政(国)の迅速な政策実行が最も重要である。

日本における医療データの源は当然ながら皆保険の「レセプト」であり、審査の基本は病名である。病名と治療内容に応じて定額としたDPC病院は1700以上の医療機関が参加している。基準となる係数の適正化を迅速に図り、すべての入院医療機関のDPC採用を推し進めるべきである。この改革で最も注意しなければならないのは萎縮医療と過剰医療であることは言うまでもない。

次いですべての外来医療機関に厚労省が作成したICD10対応レセプト請求ソフトを無料配布し、皆保険である利点を用い、医療データの解析に利用すべきである。厚労省自身が電子カルテも同時に配布すれば、傾向的診療の判定には最も役立つツールとなる。医療ソフト会社や医療側の反対は猛烈であろうが、皆保険維新として断行すれば、今後の日本医療にとって光明となるはずである。

蛇足だが、支払い基金での現行電子レセプト請求件数は医科で98.2%で、さらにコンピューターチェックを約6%に行い、審査委員は約20%のレセプトをチェックしている。ICD10対応電子レセプト請求以外を受け付けず、すべてコンピューターチェック(AI)とすることはほぼ可能である。いまだに支払基金と国保連合会のレセプト審査の統合すらできないのは、行政の怠慢と思われても仕方ない。

相原忠彦(愛媛県医師会常任理事)[医療資源の適正活用]

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