No.5024 (2020年08月08日発行) P.65
奥山伸彦 (JR東京総合病院顧問)
登録日: 2020-07-17
最終更新日: 2020-07-17
HPVワクチンの副反応の診療には、発症・増悪の背景と考えられる生物心理社会的リスクを軽減することと、発症した機能性身体症状そのものを治療することの二つの視点が必要である。そのため、「接種前のリスク対応」と「発症時の初期対応」、そして「治療の考え方と実際の治療」に分けて説明する。
①ワクチンについて十分理解してもらうために、あらかじめ厚生労働省から発行されているリーフレットおよびQ&Aなどの説明をよく読むよう勧める。また、可能であれば、接種希望者に対してリーフレットを資料として定期的に説明する十分な機会を設けることが望ましい。
②接種希望者に対して、予診票とは別に、以下のようなチェックリストを用意して確認する。
【副反応リスクチェックリスト(例)】
・生物学的リスク
□外傷などをきっかけに原因不明の体の痛みが続いたことがある
□ワクチンを接種し、激しい痛みや手足の痺れが生じたことがある
・心理学的リスク
□ワクチンの目的や効果がよく分からない
□ワクチン接種とその副反応について、強い不安を感じる
・社会的リスク
□家族や友人、学校の先生など身近な人で、ワクチンに反対する人がいる
□ワクチンについての、テレビや新聞、SNSなどの情報に不安を感じる
□副反応が起きた時、相談できる医師が身近にいない
③チェックリストに問題があれば、接種前に確認して、評価、対応する。
既往歴については具体的な経過を確認し、機能性身体症状である可能性を判断する。理解不十分の事項は丁寧に説明し、不安についてはその内容と原因を確認して解消に努める。ワクチンに反対する身近な人には、可能ならば一緒に説明し、否定的な情報については出典を確認して納得のいくまで説明する。相談できる医師が身近にいない場合は、国の用意した診療体制全体を説明し、接種医が協力医療機関等必要な医療を紹介することを伝える。
その上で了解を得て接種するが、重大なリスクを解除できない場合は、やむをえず接種を勧めない選択肢もある。その際、20歳からの子宮頸がん検診を受けることを強く勧奨することを忘れない。
奥山伸彦(JR東京総合病院顧問)[小児科][HPVワクチン]