No.5029 (2020年09月12日発行) P.61
倉原 優 (国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)
登録日: 2020-08-31
最終更新日: 2020-08-31
先日、マスクを着けてウォーキングをしていた患者さんが、熱中症で搬送されてきた。自作の布製マスクだったのだが、非常に通気性が悪い印象を受けた。総務省消防庁によると、2020年6月の全国における熱中症による救急搬送人員は6336人であり、昨年同月の4151人の1.5倍となったそうだ。
さて、厚労省から、「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイント1)が提示されており、「高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなるおそれがあるので、屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、マスクをはずすようにしましょう」と記載されている。しかし、残念ながら40℃を超える灼熱地獄であっても、街中でマスクを外して歩いている人など、ほぼいないのが現状である。
酷暑の中マスクを着けてレスリングや剣道をしている高校生がテレビに映っていた。マスクを着けた生徒が体と体をぶつけ合って対戦する光景に、いささかの矛盾を感じざるを得ない。万全な感染対策を講じなければならない指導者のジレンマもあるとは思うが、部活動でクラスターが発生したのは、決してマスクのせいではない。
同調圧力というか、実に日本人らしい現象だと思う。周りが着けているから、自分だけマスクを外す行為に勇気が持てない。偉そうに述べているが、実は私も外でマスクを外す勇気はない。
政府が主導して、マスクの適切な使い方を指導すべき時期であると思う。
【文献】
1)厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_coronanettyuu.html
倉原 優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)[医療SNS]