No.5030 (2020年09月19日発行) P.61
荒木優子 (共永総合法律事務所・弁護士)
登録日: 2020-09-09
最終更新日: 2020-09-09
現在、厚生労働省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」において、医師の時間外労働の上限規制について議論がされています。 まず、労働基準法(以下、「労基法」)が定める労働時間の一般原則から確認していきたいと思います。
労基法は、労働時間について原則として1日8時間、1週40時間を超えてはならず(労基法32条、法定労働時間)、休日について原則として毎週少なくとも1回は付与しなければならないと規定しています(労基法35条、法定休日)。そのため使用者は原則として、法定労働時間を超えて又は法定休日に労働させることができませんが、労基法36条に基づき労使協定(協定)を締結して、所轄労基署に届け出た場合に時間外労働及び休日労働をさせることができます(労基法36条)。
今般の働き方改革の一環として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定されました。労基法上、時間外労働の上限は、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができなくなりました(労基法36条4項)。この原則については、医師も同様に適用されます。
そして、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、守らなければならない上限が定められました(労基法36条5項及び6項)。特別条項による上限は、以下のとおりです。
・時間外労働が年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6カ月が限度
・直近2〜6カ月の各期間における時間外労働及び休日労働の合計時間数の平均が1カ月あたり80時間を超えないこと
しかしながら、医業に従事する医師については、特別条項による上限規制の適用が2024年3月31日まで猶予され、猶予後(2024年4月1日以降)に適用される時間外労働の上限規制について、現在、議論が行われています。次回、その内容について紹介します。
荒木優子(共永総合法律事務所・弁護士)[医師の働き方改革]