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【識者の眼】「時間外労働の上限規制(2):医師は一般労働者の1.5〜2倍の上限に」荒木優子

No.5031 (2020年09月26日発行) P.57

荒木優子 (共永総合法律事務所・弁護士)

登録日: 2020-09-09

最終更新日: 2020-09-09

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2024年4月1日以降に適用される医師の時間外労働の上限規制について、現在、厚生労働省の検討会で議論が行われています。

議論の中では、医療機関で診療に従事する勤務医(以下、「診療従事勤務医」)の時間外労働の上限水準を(A)水準、(B)水準、(C)水準の3つの水準に分けて定めています(詳細は、2019年3月28日付「医師の働き方改革に関する検討会 報告書」https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000496522.pdf

(A)水準(診療従事勤務医に2024年度以降適用される水準)

時間外労働と休日労働の合計が年960時間以内、原則月100時間未満

(B)水準(地域での医療提供体制を確保するための経過措置として暫定的な特例水準、医療機関を特定)

時間外労働と休日労働の合計が年1860時間以内、原則月100時間未満

(C)水準(一定の期間集中的に技能向上のための診療を必要とする医師向けの水準)

時間外労働と休日労働の合計が年1860時間以内、原則月100時間未満

(B)水準及び(C)水準の上限の年1860時間は、月155時間の時間外労働に相当します。これは、前回(No.5030)述べた一般の労働者の単月の上限の約1.5倍、複数月の平均の約2倍に相当する時間ですが、医師も人間ですので、一般の労働者の1.5倍、2倍働かせても心身に問題が無いということにはならないと思います。まさに命を削って働いているようなものですので、上限が1860時間になったとしても1860時間働かせても問題無いと捉えるのではなく、一般の労働者の水準に近づけるよう労働時間の削減に引き続き取り組むことが重要だと考えます。

最後に(C)水準については、初期研修医も対象になっています。入職後間もない時期であり業務に慣れておらず、また頑張り過ぎに自身では気づかないこともあろうかと思います。そのため、個々の研修医の状況に応じて、より一層心身の健康が確保できるような配慮をして頂きたいと思います。

荒木優子(共永総合法律事務所・弁護士)[医師の働き方改革]

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