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【識者の眼】「プレプリントの功罪」倉原 優

No.5038 (2020年11月14日発行) P.56

倉原 優 (国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)

登録日: 2020-11-04

最終更新日: 2020-11-04

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コロナ禍では、SNSに多くの医師インフルエンサーが誕生した。その中には、ランダム化比較試験の結果や最新のエビデンスを紹介する有益なアカウントもあり、私もよく閲覧している。新型コロナウイルス感染症に関して、2〜4月頃に目立ったのはプレプリントサーバーの論文やそれに関するニュースである。

「プレプリント」とは、査読前論文のことである。なぜ査読されていないものを掲載するかというと、サイエンスの世界でアイデアの提示、迅速な結果発表、他の研究者から得られるフィードバックを基に研究をさらに発展させることを目的としている。医学分野では、世界中の医療従事者に研究結果を広く知ってもらおうというボランティア精神があると信じたいが、どうもそういうわけではなさそうだ、というのはすぐに分かった。自分の研究に対する承認欲求があるのか、大げさな文面が多いのだ。崇高な精神でプレプリントサーバーに論文を投稿している医師もいるとは思う。しかし、何というか、全体的に過大な表現が多いなと感じた。

それを証明した論文が出た。プレプリントの論文に記載されている表現が過大で、都合の良い解釈、すなわちSPINである頻度がPubMedのそれよりも高いという報告である1)。とはいえ、SPINが多いのはランダム化比較試験の世界の常であり、これはプレプリントに限った問題ではなく、査読リテラシーが問われている案件なのだと思う。

【文献】

1)Kataoka Y, et al:Eur J Intern Med. 2020:4627. doi:10.1016/j.ejim.2020.09.019

倉原 優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)[医療SNS]

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