No.5038 (2020年11月14日発行) P.62
柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科副医長)
登録日: 2020-11-06
最終更新日: 2020-11-06
内閣府が10月に発表した「第5次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(素案)」において、「処方箋なしに緊急避妊薬を利用できるように検討する」という文言が入り、緊急避妊薬(アフターピルとも呼ばれる)の薬局販売に関する議論が始まりました。そこで今回は緊急避妊薬によくある6つの誤解について紹介します。
日本で第1選択薬のレボノルゲストレルは黄体ホルモン単剤であり、低用量ピルのように血栓リスクはありません。禁忌は黄体ホルモンへの薬剤アレルギー、妊娠、重篤な肝障害の3つであり、世界保健機関(WHO)や米国産婦人科学会は「緊急避妊薬には重篤な副作用はなく、基礎疾患がある人を含めて安全に内服できる」としています。
昔に使用されていたヤッペ法(中用量ピルを使用した緊急避妊)では、嘔気・頭痛などが起こりやすかったのですが、レボノルゲストレルの国内使用成績調査では嘔気・頭痛の頻度は1〜2%と低く、もし起きても1日で自然に改善します。
黄体ホルモンを内服しても将来の妊娠への悪影響や不妊症のリスクは上昇しません。内服後に不正出血が起きることがありますが、その後の月経周期や妊娠へは悪影響は起こりません。
緊急避妊薬は妊娠阻止率が100%ではないため内服しても妊娠してしまう方がいます。妊娠に1番早く気づくには「次の月経予定から1週間後/内服後21日たっても月経がこない」時に薬局で妊娠検査薬を購入して検査をすることです。内服後に妊娠した場合に異所性妊娠リスクが増加することもありません〔Cleland K, et al:Obstet Gynecol. 2010;115(6):1263-6.〕。
緊急避妊薬は性行為からの時間が経過すればするほど効果が落ちます。妊娠阻止率は性行為から24時間以内95%、24時間以降85%、49時間以降58%と低下するため、土日や夜間含めて必要な時に薬を提供できる形が理想です。
緊急避妊薬のアクセスを良くすると性行動が乱れ、性感染症が増加するかどうかは、増加する〔Mulligan K:Health Econ. 2016;25(4):455-69.〕という報告と変化しない〔ESHRE CapriWorkshop Group:Hum Reprod. 2015;30(4):751-60.〕という報告があります。
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緊急避妊薬を提供する際に、性感染症や確実な避妊法についての情報提供が重要です。緊急避妊に関しては日本産科婦人科学会の「緊急避妊法の適正使用に関する指針」がインターネット上で閲覧可能です。とても分かりやすいので是非ご覧ください。[http://www.jsog.or.jp/uploads/files/medical/about/kinkyuhinin_shishin_H28.pdf]
柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科副医長)[緊急避妊薬]