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【識者の眼】「コロナ禍とSDH(健康の社会的決定要因)」草場鉄周

No.5041 (2020年12月05日発行) P.57

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2020-11-24

最終更新日: 2020-11-24

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既に本欄「識者の眼」でも度々西村真紀先生が取り上げておられるように、健康の社会的決定要因(SDH)は近年とみに注目されている大切な概念である。日本プライマリ・ケア連合学会では2018年に「健康格差に対する見解と行動指針」(http://www.primary-care.or.jp/sdh/)をプライマリ・ケアにおける重要課題として内外に示した。

本稿では簡潔にそれを紹介し、是非多くの読者に関心を持って頂くきっかけとしたいと考える。なぜなら、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにおいて、SDHは流行拡大および死亡率増加に大なり小なり影響を与えているからである。感染リスクがあっても働かざるを得ないエッセンシャルワーカーの方や飲食店を経営する事業主や従業員の方はもちろん、接待を含む飲食店や風俗業で働く人々も社会の中で間違いなく必要な存在である。結果として感染拡大に影響したとしても、自由と多様性を重んじる社会の持つリスクとして冷静に受け止めることが重要であり、差別や非難の言葉をかけるのは論外である。

本学会では「社会的要因により健康を脅かされている個人、集団、地域を認識し、それぞれのニーズに応える活動を支援します」と掲げ、「あらゆる人びとが、それぞれに必要なケアを得られる権利を擁護するためのアドボカシー活動を進めます」とした。コロナ禍の中、地域毎にこうした健康リスクが高まっている人々が確かに存在し、我々が地域医療の現場から声を上げることが非常に重要である。他人事と捉えない姿勢が今こそ求められる。

そして、「患者・家族および関係者や関係機関(専門職、医療や福祉の専門機関、地域住民、支援ネットワーク、NPO、行政、政策立案者など)とパートナーシップを構築します」と宣言した。このコロナ禍は職種や組織を超えて取り組むべき健康課題であるが故に、予期しない形でこうしたパートナーシップを育むきっかけになったのではないだろうか。失われたものも多いが、ここからより良い社会を作る視点を私たちは大切にしたい。

草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]

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