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【識者の眼】「『ザイタク医療』①〜2つのきっかけ〜」田中章太郎

No.5053 (2021年02月27日発行) P.58

田中章太郎 (たなかホームケアクリニック院長)

登録日: 2021-02-18

最終更新日: 2021-02-18

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現在、兵庫県三田市で在宅医療に取り組んでいる。今回、この執筆依頼をいただき、大変嬉しく思っている。1年間毎月投稿にて、『ザイタク医療』の具体的なことをお伝えできればと思う。

このコロナ禍で在宅医療の必要性が増していると感じる。コロナ禍以前は、外来通院が困難な場合、在宅医療の適応であっても、介助方法を駆使し、通院を継続する傾向であった。しかし社会活動・生活様式の変化に伴い、例えば、AmazonやUber Eatsの様な[宅配]の敷居が下がった。医療の世界でも同様に、在[宅医]療の敷居が下がってきていると感じる。そして、開業医がその在宅医療の担い手として、期待されている。が、実際はどうだろう? そもそも在宅医療は、コンビニエンス的利用にそぐわない医療であることから、本来の在宅医療の力を発揮できていないように感じる。

この在宅医療の力を発揮する為に、もう少し具体的に、在宅医療とはどういうものか? ということの理解を深める必要があるように思う。患者や市民や介護者や医療者、全ての方が、在宅医療の文化を理解することで、きっと、このコロナ禍の難局を乗り越えていけるだろう。今シリーズでは、できるだけ具体的な在宅医療に関する話をしたい。

さて、在宅医療を語る前に、タナカが在宅医療に取り組む2つのきっかけを話しておきたい。医師3年目に経験した祖母の在宅看取りと、研修医時代の同級生の死、だ。肺癌末期患者であった祖母は、入院治療中、いつも「お家に帰りたい」と言っていた。介護保険制度も知らず、生活再建学であるリハビリテーション医学の知識や経験もなく、また、研修医時代には、実際の患者の生活を学ぶことがなく、そんな3年目の医師タナカが、祖母の自宅に泊まり込み介護をし在宅看取りを経験した。これらを、学ぶこと、学んでいくことが、在宅医療に取り組むきっかけとなった。また、同級生の死も、24時間365日の在宅医療に取り組む1つの理由だ。研修医の労働条件の向上を目指した現在の医師臨床研修制度のきっかけとなった死であったのだが、当時所属していた胸部外科教室の教授に、患者の生死を預かる医師の仕事において、果たして労働基準という判断が適応するのかどうか、これからの君の医師人生で考えてみなさい、という宿題をいただいた。が、未だにその答えは出せていない。

今シリーズで自分自身が取り組む在宅医療を具体的にお伝えすることで、また、新しいステージへ進めたらと思う。よろしくお願いします。

田中章太郎(たなかホームケアクリニック院長)[在宅医療]

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