No.5063 (2021年05月08日発行) P.95
草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)
登録日: 2021-04-19
最終更新日: 2021-04-19
以前も本コラム(No.5033)で紹介したことがあるが、筆者が所属する〈コロナ危機下での医療体制と医療機関の経営問題についての研究会〉がこの4月16日に、「コロナ危機で露呈した我が国医療提供体制の課題克服に向けて」と題した2回目の提言を発表した。その詳細はキャノングローバル戦略研究所HP内にある(https://cigs.canon/article/20210416_5730.html)。また、同日には日本記者クラブにおいて記者会見も行っており、その動画も記者クラブHPにある(https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/35880/report)。
今回の提言では当座の第4波への対策としては、無症状者への戦略的検査、保健所の体制強化、大規模病院の体制や重症者の受け入れ状況の「見える化」、医療機関の役割分担による医療資源の最大化、医療提供体制強化への知事の指導力強化といった現在進行形のものが中心となった。
提言の目玉はむしろ、その背景にある構造的な問題である。平時の病床利用、医師・看護師の配置、病院間の役割分担、診療所の果たすべき機能、専門職間のタスクシフトなど、今回のコロナ禍を通じて見えてきた様々な課題を幅広く論じている。
私の専門のプライマリ・ケアの立場からは、比較的高齢の医師が一人で運営し、患者の動線の多様化が難しい日本の診療所の現状では、コロナ疑い患者のオンライン診療あるいは訪問診療による診療・検査、更にはクラスターが発生した施設への診療・検査といった面では貢献が難しかった事実を直視した。その課題を克服するために、平素よりかかりつけ総合医を市民が登録し、双方向のコミュニケーションを可能とした上で、一般的な診療はもちろん、予防医療・健康増進、パンデミックや災害の場合の健康管理、更には訪問診療・オンライン診療に対応できるように体制を整備していくシステムを提案した。
本提言はまだ中間であり、今年の夏から秋にかけて最終提言を発出する予定である。また、このコラムでも解説していきたい。
草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]