No.5063 (2021年05月08日発行) P.94
藤原康弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)
登録日: 2021-04-22
最終更新日: 2021-04-22
コロナ禍でも誇れる我が国の持つ良い仕組みとして、ワクチン接種や医薬品の適正な投与下で、不幸にして発生してしまった健康被害に対して用意されている救済制度の話を2回に分けてお伝えしたい。
我が国の健康被害救済制度には主なものとして2つある。ひとつは、予防接種法を根拠とし、接種に係る過失の有無にかかわらず、予防接種と健康被害(副反応プラス接種行為に起因するものも含む)との因果関係が認定された方を迅速に救済する「予防接種健康被害救済制度」。もうひとつは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法を根拠とし、医薬品(病院・診療所で処方されたものの他、薬局等で購入したものも含まれるが、抗がん剤や免疫抑制剤は多くが制度対象外)を適正に使用したにもかかわらず、その副作用により入院治療が必要になるほど重篤な健康被害が生じた場合に救済を行う「医薬品副作用被害救済制度」である。
たとえば、新型コロナワクチン(臨時接種という区分で実施中)の接種により、死亡に至った場合には、医療機関側の過失の有無にかかわらず、遺族に対し、4420万円の死亡一時金と葬祭料21万2000円が給付される。また、18歳以上の成人において、常に介護が必要になるような1級の障害が生じた場合には障害年金505万6800円(年額)が支給され、在宅での介護になった場合、1級では、年額84万4300円の介護加算が支給される。そして、治療に使った医療費(自己負担分)と入院や通院などに使った諸費用(医療手当)も支給される。
この予防接種時の救済制度の申請は、居住されている市町村の窓口で受け付けている。厚生労働省の疾病・障害認定審査会により、因果関係に係る審査が行われ、その健康被害が接種を受けたことによるものであると厚生労働大臣が認定したときは、市町村により給付が行われる。財源は国、都道府県、市町村が2:1:1で賄っている。WHO加盟国の13%弱の国でしか同様の制度は存在しない。
次回は医薬品の健康被害救済制度について紹介する。
藤原康弘(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)[薬事]