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【識者の眼】「自治体として新型コロナの急速な感染拡大に対応するための10のポイント」和田耕治

No.5064 (2021年05月15日発行) P.60

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2021-05-07

最終更新日: 2021-05-07

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新型コロナウイルスが従来株から英国由来の変異株に置き換わるなかで、急激な感染者の増加が起きています。都道府県などの自治体の積極的で柔軟な対応により、死亡者を最少化できるかにかかっています。様々な自治体の支援に入った医師との対話から明らかとなった10の良好事例を紹介します。特に、自治体と医療関係者との連携が重要となります。平時から連携し、常に対立関係にならないようにします。

1. 知事や市長などの意思決定者と医療関係者が直に認識を共有するルートを持つ。

2. 自治体ごとの役割を明確にしつつ、リエゾンとなる方を都道府県本部に送る(特に政令市)。病床確保は都道府県、自宅療養や生活支援は市、宿泊療養は両者が担うことが多く、全て連動する。

3. 医療調整本部のメンバーに災害医療コーディネーター、感染症専門医、行政医を含める。関係者(病院長、救急部長、県と市の幹部など)によるSNSのグループをつくって、データ、情報、状況認識を日々、共有する。

4. 本部要員の拡張を計画する(感染症担当に丸投げしない)。BCPを発動して全庁的な対応を得る。機能班を配置する(病床確保班、宿泊療養班、自宅療養強化班など)。

5. 大学などと連携して感染者数や重症者数のシミュレーションを依頼し、2週間後の状況を具体的かつ定量的に想定する。

6. ある時点で明示的に災害医療に切り替える。不急な診療を中止する。DMAT・JMATを活用する。看護師の受援や広域搬送を担う機能班、クラスター発生施設を支援する機能班を本部に設置する。

7. 首長と医師会が連名で総力戦を呼びかける。医療機関では一般病床の4〜5%程度の受け入れを想定する。基幹病院(市立病院・県立病院・大学病院)が率先する。後方病院に人員の派遣を早めに呼び掛ける。開業医、訪問看護なども自宅療養者のケアにあたる。

8. 病院は病院にしかできないこと(隔離と治療の目的は分ける)に徹する。酸素を必要とする場合の対応を最優先に確保する。最悪を想定し、入院や搬送の目安の設定及び変更を想定しておく。

9. 感染者数を減らすための重点措置や宣言などの対応は早めに行わないと、その分遅くまで時間がかかることになる。介護福祉施設に予防(早期対応と受援も)について指導・啓発をして、患者の発生を減らすことにつなげる。

10. 時間がある自治体では、緊急時計画とBCPを作り、机上訓練をする。療養者が人口10万あたり50人、100人、200人を想定する。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス対策]

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