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【識者の眼】「地域住民同士の安全なグループの場を活かす〜終活や人生会議の推進〜」岡江晃児

No.5096 (2021年12月25日発行) P.66

岡江晃児 (杵築市医療介護連携課兼杵築市立山香病院・ソーシャルワーカー)

登録日: 2021-12-08

最終更新日: 2021-12-08

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大分県杵築市では、多くの国民が認知している「終活」という言葉を活用し、2018年度から「きつき終活応援プロジェクト」として様々な事業を展開し、元気な時から「死生」や「人生会議」について考える文化の構築をめざしている。様々な事業のひとつとして、市政出前講座「終活・エンディングノート書き方講座」があり、市職員(ソーシャルワーカー)が地域住民のサロンや老人会等へ出向き、終活の説明やエンディングノート作成の支援を行っている。

市政出前講座終了後に取るアンケート(平成30年度〜令和元年度)によると、参加される地域住民の中には、講座以前から終活を始めていた地域住民(18.5%)や興味はあったが活動はしていない地域住民(62.8%)もいる一方、終活に興味がない地域住民(9.4%)も参加している現状がある。そのような様々な状況の地域住民が集まるサロンや老人会等のグループでは、今までの『個』で行う終活とは異なる、地域住民というグループ特有の参加者同士が互いに支え合うことによる効果が起きている。

出前講座のプログラムでは、市職員が一方的に講話するだけでなく、『人生会議(ACP)』に関するクイズや終活かるたのゲーム、エンディングノートの共有等を行い、参加する地域住民同士の相互作用の促進やグループ意識が高められるような工夫を取り入れている。その結果、終活に興味がない地域住民が『終活に必要な知識をもっと勉強する』『お世話になってきた人たちと交流を深めたい』『健康維持・改善に努めていきたい』等の前向きな感情へ変化している。それは、グループワークで重要な『安全なグループの場』が既に構築されていることが要因のひとつだと考える。

同じ地域に住み、日頃から支え合っている地域住民が集まるサロンや老人会のグループだからこそ、似たような課題や悩みを抱えているのが自分一人ではないことを再認識したり、仲間意識を持ち、仲間に受け入れられる経験を経て自己評価を高め、自分自身を受け止められるようになり、終活や人生会議を始める一歩に繋がっている。

岡江晃児(杵築市医療介護連携課兼杵築市立山香病院・ソーシャルワーカー)[グループワーク][終活][人生会議]

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