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【識者の眼】「2022年度薬価制度改革の残された論点と薬剤費コントロール」坂巻弘之

No.5101 (2022年01月29日発行) P.56

坂巻弘之 (神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)

登録日: 2022-01-06

最終更新日: 2022-01-06

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2021年12月22日、中央社会保険医療協議会(中医協)は22年4月の薬価改定率をマイナス1.35%とすることを決めた。薬価制度改革の骨子についても有用性加算などに相当する適応拡大の製品も新薬創出加算の対象とすることなどを了承した。一方で、薬事・食品衛生審議会はアルツハイマー病治療薬アデュカヌマブの薬事承認については継続審議とすることを決定した。当該製品を念頭に中医協において薬価収載前に異例とも言える議論が行われてきたが、継続審議となったことにより、高額で市場規模が大きく財政影響の大きい新薬の薬価収載ルール策定は先送りされることになった。

その他、議論のあったジェネリック医薬品やバイオシミラーの初回収載時の薬価算定のあり方、薬価改定時の調整幅等については、基本的に変更はなかった。これらの決定をふまえて22年度の薬価制度が決まったことになる。「医薬品産業ビジョン2021」等でイノベーション評価が議論されたものの今回の薬価制度改革では、本質的な議論があったとは言えず、更なる議論が求められる。

一方、薬剤費の伸びとイノベーション評価を背景に薬価制度改革の中で薬剤費コントロールについての議論も盛り上がった。わが国の薬剤費はこのところ増加しておらず、産業振興側視点からの国際的な日本市場の魅力度に対する懸念の一方で、総額コントロールの必要性の意見もある。後者は、財政の予見可能性と予算統制の必要性から財務省を中心に「薬価総額のマクロ経済スライド」の検討の意見が示されている。

マクロスライドは経済成長レベルの薬剤費の伸びは認めており、必ずしも薬剤費抑制ではないとの主張もあるが、財務省資料からは薬剤費抑制が主目的と考えざるをえない。新薬のイノベーション評価による増加分を長期収載品やジェネリックの薬価引き下げで対応するとの考え方も示されているが、新薬のイノベーションをどのように評価するのか、薬価引き下げの仕組みの透明性確保が見通せないなどの課題も多い。外資系を中心とした新薬メーカーとジェネリックメーカーとで評価が異なっており、業界内の意見対立が議論を複雑にしている。

いずれにしても、薬剤費コントロールについての継続的な議論は必要であるし、多面的なイノベーションの一方で財政影響の大きな新薬の登場が予想されることから、薬剤費と薬価制度のあり方についての議論が重要である。

坂巻弘之(神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)[薬価]

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