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【識者の眼】「加齢男性性腺機能低下(LOH)症候群について」小川純人

No.5105 (2022年02月26日発行) P.61

小川純人 (東京大学大学院医学系研究科老年病学准教授)

登録日: 2022-01-28

最終更新日: 2022-01-28

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男性において、加齢に伴う性ホルモン濃度の低下は更年期障害と関連し、加齢男性性腺機能低下(Late-onset Hypogonadism:LOH)症候群と理解されている。LOH症候群の症状や徴候としては、性欲や性機能の減退、知的活動や認知機能の低下、気分変調(疲労感、抑うつ、短気など)、睡眠障害、筋量減少、内臓脂肪増加、皮膚・体毛の変化、骨量低下や骨折リスク増加などが挙げられる。

LOH症候群では、不定愁訴で受診する場合も少なくなく、質問紙を通じた問診やスクリーニング、他疾患との鑑別、血中遊離テストステロン値測定などのホルモン学的検査を中心に、男性性腺機能を評価する。LOH症候群のスクリーニングでは質問紙が用いられる場合も多く、その1つにAMSスコアが挙げられる。AMSスコアは自己記入式で、心理的、身体的、性機能の各因子からなる計17個の質問から構成されている。また、うつ病との鑑別やうつ症状の重症度評価、ADL評価も行われる。

LOH症候群に対しては、アンドロゲン補充療法(ART)が考慮される場合が少なくないが、「加齢男性性腺機能低下症候群診療の手引き(日本泌尿器科学会/日本メンズヘルス医学会編)」などに基づき、患者意向、性機能やQOL改善の可能性、有害事象リスク、費用などを事前に十分話し合うことが大切である。その際、前立腺癌、PSA高値、中等度以上の前立腺肥大症、多血症、重度の肝・腎機能障害、うっ血性心不全、重度の高血圧、睡眠時無呼吸症候群などの除外基準も評価する。その上でLOH症状および徴候を有する40歳以上男性に対して、血中遊離型テストステロン値が低下している場合にARTを考慮し、同値8.5pg/mL未満の場合にはARTが第一選択となる場合が多い。テストステロン補充によって、筋肉量を含めた体組成変化、筋力増加や転倒リスク低下が認められる可能性も示されている。

ART開始後は、定期的にPSAを含む血液検査、臨床症状や治療効果の評価を行うことが重要である。少しそれるが、日常生活ではボランティアをはじめとした社会活動や運動を行う、他人との接点を増やす、褒める・褒められる場面を増やす、などにより内因性テストステロン値増加につながる可能性があり、コロナ禍の今だからこそ普段以上に留意しておきたい。

小川純人(東京大学大学院医学系研究科老年病学准教授)[更年期障害]

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