No.5103 (2022年02月12日発行) P.56
小倉和也 (NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)
登録日: 2022-02-02
最終更新日: 2022-02-02
オミクロン株の急速な拡大により自宅療養中心となった新型コロナ対策は大きな転換点を迎えている。日本在宅ケアアライアンスの自宅療養者に対する医療提供プロトコールも改定され、内服や点滴を在宅で行う基準も示された。しかし、圧倒的な患者の増加に対しては、訪問診療や訪問看護を提供できる医療機関数も限られている。今後救急医療を逼迫させずに必要に応じ医療提供を行うことで、患者が安心して自宅療養していくためには、健康観察から電話・オンライン診療、そして往診や救急搬送を誰にどの段階で行うかの適正化が急務となっている。
全国の現場の声を聞いていると、この体制を整備するにあたり、疫学調査や健康観察を行う保健所と、ケアを求める患者、医療提供にあたる医療機関の間で、立場の違いによる行き違いが一層顕著になっていると感じる。一見折り合わないようにも見える状況を、ここで整理してみたい。
第一に優先すべきは、患者のケアと医療提供であることは明白であろう。当たり前のことのようだが、現場では感染確認や疫学調査に追われ、ややもすると忘れられてしまう。発症から1週間ほどして宿泊療養施設や自宅療養でのオンライン診療を行うと、既に症状のピークは過ぎており、この時点で初めて療養指導や処方を行うといったこともしばしば認められる。
第二に、感染拡大を防ぐため、可能な場合は早期に隔離することが重要だ。1週間家で家族と過ごしてからの宿泊療養ではほとんど意味がない。今後、宿泊療養施設を利用できる人の割合はますます限られてくるため、家族に重症化しやすい人がいる場合など優先する人を迅速に決定し速やかに隔離する、それ以外の調整中の方は一旦自宅療養扱いとすることで、健康観察や医療提供の空白時間が生じないようにする必要がある。
第三に、これらを解決するためにも業務の適正な簡素化と効率化により保健所、医療機関の業務そのものを減らすことが重要である。地域によっては行われている抗原検査陽性後のPCR検査での確認やトリアージ受診、同じような情報を別々のフォームで何度も聞き取り・記載し、電話とFAXでやり取りしながら連携することも、本来行うべき上記2つの速やかな実行を妨げ、いたずらに保健所や医療機関の労力を奪っている。
何よりまず患者のケア、次に感染拡大防止、そしてそのためにも保健所・医療機関の負担を減らすこと。その上で、健康観察だけで良い方から、オンラインや電話対応が必要な患者、そして訪問看護や往診が必要な患者と適切により分け、地域ごとに異なる限りある医療資源を最適化して分配することが、地域全体で闘う大前提ではないだろうか。
【文献】
1)日本在宅ケアアライアンス:新型コロナウイルス感染症の自宅療養者に対する医療提供プロトコール第6版.
小倉和也(NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)[新型コロナウイルス感染症]