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【識者の眼】「GLP(Good Laboratory Practice)─皆さんご存知ですか?」藤原康弘

No.5115 (2022年05月07日発行) P.65

藤原康弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)

登録日: 2022-04-12

最終更新日: 2022-04-12

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薬事世界には、臨床試験の実施の基準であるGCP以外にも、G▲Pと称するものが数多くあるが、本稿では、GLP(Good Laboratory Practice)を紹介する。

GLPは、新医薬品等の承認申請資料として提出される毒性試験の信頼性を確保するための基準であり、高品質、かつ再現性の高い動物実験結果を得るための「データの品質管理システム」である。PMDAが実験施設に立入調査も行う。研究不正が大きなニュースとして取り上げられる昨今、決して大きくは取り上げられないが、承認申請データ中の動物実験データの改ざん事例も時折発生している。不正防止の観点からもGLPの必要性は高まっており、官民共同研究を基に製品の承認申請をめざす研究者にも留意していただきたい。

GLPの歴史は古く、わが国では行政指導として1982年に導入された。1997年には法的強制力のある厚生労働省令に格上げされた。他のG▲Pと異なり、医薬以外の化学物質(農薬や工業化学物質など)の規制にも利用されていることが特徴的であり、このため、GLPの国際調和活動も、医薬品規制調和国際会議(ICH)ではなく、国際機関である経済協力開発機構(OECD)が担っている。OECDでは1981年にGLPの原則を作成している。

動物試験施設より依頼を受けて、PMDAが調査した結果、GLP適合性が確認された施設にはGLP適合確認書(有効期間3年)を発行している。この適合確認書は、新薬等の承認申請時に提出される動物実験データの信頼性保証に利用されている。PMDAでは、現時点約70の試験施設にGLP適合確認書を発行している。

また、国際的には、OECDの活動の大きな柱がGLPデータ相互受け入れ制度(MAD)である。OECD加盟国内の試験施設で実施されたGLP試験は「信頼性ある試験データ」として他の加盟国に受入れが義務づけられている。OECD加盟国(2022年3月現在38カ国)のGLP査察当局からの代表者で構成されるGLP作業部会(WP)で、このMAD制度の運用をしている。PMDAは2006年からOECD事務局に継続的に職員を派遣してきたが、2017〜18年にはPMDA職員がGLP WPの議長に就任するに至った。

国際的には動物実験離れが進むが、医薬品の開発で動物実験は不可欠である。動物福祉の観点からも国際的に無駄な実験を繰り返さないよう、OECDが行うGLP国際調和活動にもメジャープレヤーとして貢献していきたいと思う。

藤原康弘(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)[薬事][動物実験]

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