株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「新型コロナ対応の有識者会議を終えて」草場鉄周

No.5125 (2022年07月16日発行) P.60

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2022-06-23

最終更新日: 2022-06-23

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

5月より5回にわたって開催された新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議が6月15日に終了した。その日中に岸田総理から「内閣感染症危機管理庁」の設置、そして「日本版CDC」および厚労省内の「感染症対策部」の設置が示され、6月17日には政府のコロナ対策本部でその方針が正式に決定された。

既に有識者会議の報告書は政府のHP(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/coronavirus_yushiki/pdf/corona_kadai.pdf)に提示されており、報道でもその骨子は説明された。筆者はプライマリ・ケアの専門家の立場で参画したが、この領域についてはコロナ禍で浮かび上がった課題はある程度明確になり、平時からどう取り組むべきかの方向性をある程度示せたと自負はしている。

これを受けて6月17日の対策本部の資料(https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r040617.pdf)で示された具体的対応としては「都道府県は、医療機関等との間で自宅・宿泊療養者に対する医療の提供(オンライン診療、往診、訪問看護等)や健康観察の具体的な内容に関する協定を締結し、自宅・宿泊療養者への必要な医療提供体制を確保する仕組みを創設し、感染症まん延時の医療確保等の実効性を担保する。都道府県が医療関係団体に対し、協力要請を法的に可能とするなど計画の実効性を確保する」とされた。

もちろん、現在のように医療機関の自主性にすべて依存した枠組みからは一歩踏み込んだ仕組みであることは事実であるが、協定を結ぶのは医療機関の自由裁量ということになると、結果的には現在の手挙げ方式と変わらず、協定を結んだ一部の医療機関へ感染症対応の負担が集中する事態が生まれはしないかと危惧される。

筆者は感染症対応をかかりつけ医機能の中に取り込むことでより一般化し、非常事態での動員というよりも、日常診療の延長線上にある危機対応ととらえ、平時からの即応体制の構築が必要と考え主張したが、残念ながらそれは取り入れられなかった。もちろん、それはかかりつけ医機能の制度化とリンクするものであり抵抗が強いのは理解している。しかし、日本の得意とする見た目の良い表面上の対応策だけで良いのだろうか? 疑問は尽きない。

草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療][新型コロナウイルス感染症]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top