No.5129 (2022年08月13日発行) P.58
邉見公雄 (全国公私病院連盟会長)
登録日: 2022-07-28
最終更新日: 2022-07-28
7月20日、塩野義製薬が開発した新型コロナウイルス経口薬「ゾコーバⓇ」の緊急承認を見送るとの発表があった。厚生労働省の薬事・食品衛生審議会(薬食審)医薬品第二部会で2時間以上の議論の結果、審議を継続することとなったこの決定には正直驚いた。医薬品業界やメディアのほとんどの人達が承認を前提に配送などの準備に追われていたからである。政府も承認を前提として100万人分確保に合意し、それを後藤厚労大臣が閣議後の記者会見で発表した。塩野義の株価は10%下落したとか。
なぜ継続審議となったのか。主要評価の一番目のウイルス力価、つまりウイルス量は対照の偽薬群より有意に減少しておりクリアしたが、2つ目の12症状改善スコアが達成できなかったことが理由らしい。しかし、呼吸器症状に限れば有意な改善、さらに新たに懸念される有害事象はなかったとのこと。これなら緊急時で戦時の今、目をつぶって承認というのはあまりにもど素人の戯言であろうか? 前のめりになったイレッサⓇの反省か? 自由民主党の甘利氏のツイートへの反作用的配慮など、政治的要素はなかったとは信じたいのだが……。
第7波で医療の逼迫が進み、コロナ以外の一般救急患者の搬送困難事例が急増の中、早期に次の審議会を開催していただきたい。治験例を増やすのが要件ならば、さらに半年は後れるのであろう。専門知が大衆知に勝るとは限らないことは、このコロナの2年間に散見された事例でご承知のはず。歯科医院やパチンコ屋などにクラスターはまったく発生していない。クスリにリスクは付き物と国民はよく理解、承知している。ここは社会的プラセーボ(偽薬)の出番ではなかろうか? 読者諸兄のお考えや如何。
邉見公雄(全国公私病院連盟会長)[緊急承認制度]