この4月から改正道路交通法が施行され、自転車利用者のヘルメット着用が努力義務となりました。ヘルメットの効果はどれだけ強調してもし過ぎることはありません。自転車のケガによる入院でもっとも多い負傷部位は頭部(32%)だったという報告がありますが、あるメタアナリシスではヘルメット着用で頭部外傷のリスクを85%、脳損傷を88%減少でき、顔の上側と中央部のケガを65%減らせたとしています。このようにヘルメットは大きな事故を防ぐ明確な効果が示されています。
これまでは、13歳未満の子どもにヘルメットをかぶらせることが保護者の努力義務でした。今回の改正で、大人も含めた全員が対象となりました。この変更は、既に努力義務となっていた子どもにもプラスの影響が期待できます。
米国の研究では大人が常にヘルメットを着用しているとは限らない場合、子どものヘルメット着用率は38%でしたが、大人が常に着用している場合の着用率は90%だったとしています。つまり大人が着用していると、子どもの着用率が上がるのです。まずは大人が見本を見せることが大事というわけですね。
一方で、あまり知られていませんがヘルメットとは関係ない自転車事故もあります。その1つはハンドル外傷です。これは運転中にバランスを崩して前輪が子どもの体の向きと垂直方向に回転し、ハンドルの先端が胸やお腹にぶつかるケガです。頻度は多くないものの、ハンドル外傷はハンドル以外の自転車に関連する外傷と比べて、腹部にケガを負うリスクが高いこと、手術治療を必要とする可能性が高くなること、一方で、外からの見た目ではあまり重症に見えないため、家族などが最初に状態を過小評価しやすいリスクがあることが報告されています。ハンドルの形状を工夫して外力が1点に集中しないような形にするなどの製品開発が重要ですが、自転車のハンドル外傷の危険性についても、この機会にもっと知られるといいなと考えています。
坂本昌彦(佐久総合病院・佐久医療センター小児科医長)[頭部外傷][ハンドル外傷]