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【識者の眼】「地域包括ケア病棟はどうなる」武久洋三

No.5186 (2023年09月16日発行) P.66

武久洋三 (平成医療福祉グループ会長)

登録日: 2023-09-05

最終更新日: 2023-09-05

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地域包括ケア病棟(以下、地ケア病棟)が創設されてから、来年でもう10年だ。私は当時の宇都宮啓保険局医療課長率いる改定チームの並々ならぬ意欲を感じていた。なぜなら高齢患者が爆増している現状と将来を考えて、細かな診療報酬設定でなく包括することにより、病院側が自由に治療を行える包括性治療という新しい概念を打ち出したからだ。

リハビリテーション(以下、リハビリ)についても、療法士と患者の1対1のリハビリだけしか認めない屈曲した状況に対し、集団リハビリや他職種スタッフも関与する自由なリハビリの提供を期待していることがうかがえた。だが不真面目な病院も出てくることを懸念して、個別リハビリを最低2単位実施することを要請した。しかし2019年にはリハビリ2単位実施どころか、何と地ケア病棟に入院する患者の1/3がまったくリハビリを実施していないことが厚生労働省の資料で示されたのだ。今や地ケア病棟も療養病床も70歳以上高齢者が8割以上を占めており、地ケア病棟は明らかに高齢者のための病棟である。リハビリの不要な入院患者がいるわけがない。

また療養病床も地ケア病棟の届出ができる。2022年改定で要件化された、療養病床の地ケア病棟に対する5%減算は、救急受け入れ対応をしていれば免除される。これはまさに療養病床の抜本的改革だ。ところが8月10日に開催された中医協の入院・外来医療等の調査・評価分科会では、誤嚥性肺炎や尿路感染症であっても急性期一般病床に救急搬送される割合が高いことが示された。しかし高齢患者の救急は、むしろ高齢者治療に習熟した地ケア病棟に任せたほうが予後が良いという常識は認められるべきであろう。

一方で救急は重症もいるので、高齢者といえども地ケア病棟に任せるべきではないという人もいる。間違った認識をしないでほしい。救急患者を診察するのはあくまでも病院の外来であって、その結果で一般病棟か地ケア病棟のどちらかの病棟への入院が決まるのである。

私が20年以上前から「寝たきり」は急性期病棟でつくられる、低栄養・脱水患者も急性期治療によってつくられると訴え続けてきたことが最近、公にも認められてきたように感じている。

高齢者の専門病棟は必要だ。地ケア病棟は高齢者の専門病棟として、救急からリハビリまで一貫した治療の場になるべきではないか。

武久洋三(平成医療福祉グループ会長)[包括性治療][高齢者の救急・リハビリ]

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