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【識者の眼】「病院がどんどん減少している!」武久洋三

No.5190 (2023年10月14日発行) P.56

武久洋三 (平成医療福祉グループ会長)

登録日: 2023-09-26

最終更新日: 2023-09-26

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統計をみると2000〜22年までで、日本の病院数は1000以上少なくなっている。そのうち100床未満の病院は855も減少している。要するに、小さい病院ではもはや運営できない時代になってきているのかもしれない。

1945年の終戦後、1950年ごろまでに病院が建てられた。そして30年以上経って、時代の医療に合わせるため、多くの病院が改策をしたのだ。ちょうどその頃に地域医療計画が成立し、地域での病床規制が行われるほど病床は増加した。ここで世代交代した病院も多かった。

それから35〜40年たった今、まさに創設者からいうと孫の時代の医師への事業継承がなされているが、実は恐ろしいことが起っているのだ。後継ぎになってほしいという親の願いを込めて立派に医師になった子女が、病院を継がない、という事例が日本中で散見されているのだ。若い先生は都会での勤務医としての生活に慣れて結婚もし、子どもも産まれて、生活基盤を壊したくないのだろう。

親が「そろそろ地元に帰って病院やクリニックを継いでくれ」と言っても、「いや帰りたくもないし、病院も継ぎたくない」。「どうしてや、せっかく医学部を卒業できたのに」と言っても、「いや、今さら苦労して小病院を継ぎたくない、苦労することが目に見えている」「お父さんの姿を見てると自分には自信がない」。そんなやり取りで小病院やクリニックほど嫌がられて、「のんびりと勤務医をしたい」と言われてしまうのだ。そういう例が多いのか、病院が減少しているのだ。しかも、病院を売ろうとしてもなかなか売れない。世の中には前向きな拡大主義の先生もいて、大きい病院は買われているものの、効率の悪い100床未満の病院は忌避されているのだ。

世代交替の時期なのに若い先生は親の時代の独立心や拡大心はなく、自分の生活を優先する時代になってしまっている人が多いということだ。民間病院では、継承は規模にもよるが、古びた病院では住民に信頼されないので、時代の交替時期である。また、公立・公的病院もリニューアルの時期を過ぎようとしているのだ。そのため、入院率が悪い病院は、近くの設立母体の異なる病院とでも合併して新病院を作ろうとしている。

このように2020〜30年の時代は、どんどん病院の数が減ってくるだろう。クリニックの継承も減少するだろう。在宅医療は、若い先生に担ってもらいたいのに時代が変わってしまったのだ。これからどうなるのだろう。

武久洋三(平成医療福祉グループ会長)[業継承][小病院]

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