現在わが国のほとんどの地方は医療介護提供体制維持に、過疎高齢化、担い手不足という共通課題を抱えている。
当地域では老々介護、高齢者の独居も増えているため、在宅は困難になって介護施設への入所が増えているが、病状が悪化すると救急受診、入院となるため施設復帰困難、長期入院となるケースも増える。地域で明確な機能分担なしには包括ケアも機能せず、医療機関、介護施設双方に重大な影響が及ぶ。
試算では2050年度「要介護」「要支援」は941万人と20年度から4割近く増える。介護職員は302万人必要だが予測では6割しか確保できず、122万人不足する。このため、要支援を中心に4割、400万人近くが介護難民になる可能性があるらしい。
一方、介護事業者の倒産や休廃業・解散は22年で過去最多を更新した。介護スタッフの不足は深刻で、需要があっても撤退せざるをえない事業者も増えているという。22年の介護事業者の倒産は制度開始以降最多の143件、休廃業・解散も495件とのことだ。この傾向が続けば、地方を中心に介護難民は想定よりさらに増える恐れがある。
他方、開業医の平均年齢は現在60歳以上まで上昇しているが、後継者がいない施設も多く、今後のキーワードとなる在宅、施設管理機能などの喪失につながりかねない。
当地域でも診療所数は減少傾向で、深刻なのは医師会そのものが高齢化していることだ。地区医師会の平均年齢は過去20年で8歳上昇し、本年5月時点で65歳となった。在宅看取り加算を取得しているところは6カ所、在宅患者100人以上を管理している医師は3名、うち2名は25年には自身が後期高齢者になる。
当地区医師会はこの5月にA会員へアンケート調査を行った。その結果は、現在の酒田地区医師会93診療所のうち、5年以内に15診療所、10年以内に29診療所が引退する可能性が高いという驚くべきものであった。
10年後の33年には新規開業がなければ平均年齢は75歳、仮に80歳以上の開業医がまだ生きて仕事をしていると仮定しても81歳以上が21名、76歳以上が44名という、現実にはありえない未来である。
現在の延長線上で地域医療の維持、持続は不可能で、まったく新しい方式を模索せざるをえない─というのが地区医師会の結論だった。残り時間があるうちに連携推進法人等を通じ、持続可能な方策を検討しているところである。
栗谷義樹(地域医療連携推進法人日本海ヘルスケアネット代表理事)[介護職員不足][開業医の高齢化]