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【識者の眼】「大規模災害と医療支援」松﨑尊信

No.5209 (2024年02月24日発行) P.59

松﨑尊信 (国立病院機構久里浜医療センター精神科診療部長)

登録日: 2024-02-14

最終更新日: 2024-02-14

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「識者の眼」を担当することになりました、神奈川県横須賀市にある国立病院機構久里浜医療センター精神科の松﨑と申します。まずは、2024年1月1日に石川県で発生した能登半島地震におきまして、被災された方ならびにそのご家族に心よりお見舞い申し上げます。皆様の安全と被災地の1日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

今回の能登半島地震のように、大規模な災害が起きたとき、政府を筆頭に自治体、企業、NPOや個人などが、復興のため迅速かつ広範な支援を行います。医療においては、おおむね48時間以内の急性期から災害派遣医療チーム(disaster medical assistance team:DMAT)、日本医師会災害医療チーム(japan medical association team:JMAT)や日本赤十字社などが被災地域の支援にあたります。

DMATとは、医師、看護師と業務調整員から構成される、災害の急性期に行政機関、消防、警察、自衛隊と連携しながら、救助活動と並行して災害現場で活動できる機動性を持った医療チームです。1995年の阪神・淡路大震災で報告された「避けられた災害死」を教訓として、“1人でも多くの命を助けよう” のスローガンから、2005年4月に厚生労働省により発足しました。

また、被災地では、時間の経過とともに、救命医療や後方搬送の急性期ニーズから、長期化する災害ストレス等により新たに生じる精神的問題、精神保健医療への需要が拡大します。そこで、精神保健医療ニーズの把握、他の保健医療体制との連携、各種関係機関等とのマネージメント、専門性の高い精神科医療の提供と精神保健活動の支援を、災害派遣精神医療チーム(disaster psychiatric assistance team:DPAT)が担います。2011年3月に発生した東日本大震災における心のケアの課題をもとに、厚労省が、都道府県および政令指定都市によって組織された心のケアチームの具体的な活動要領をまとめ、DPATを定義しました。DPATでは、災害発生後1カ月程度は、自殺企図など緊急対応事例への医療対応を、1カ月以降は被災地域の精神保健医療機関へのつなぎ等を行います。

大震災後は、日常とは違う様々なストレスにさらされ、健康障害をきたすことが明らかとなっています。中でも、避難所や仮設住居など長期化する環境変化や孤立、孤独からくる飲酒量の増加、災害前にアルコールに関する問題を抱えていた人の状態の悪化など、被災地におけるアルコール関連問題は、災害医療における重要な課題の1つとなっています。

今回の能登半島地震でも、時間の経過とともに、被災地域における避難者の飲酒量の増大やアルコール依存症の新たな発症など、アルコール関連問題が顕在化していく可能性があります。私たちは、過去の大災害の事例もふまえながら、今回の能登半島地震への医療対策につなげていくとともに、今後起こりうる新たな災害への備えを怠らないように心がけていきたいと思います。

松﨑尊信(国立病院機構久里浜医療センター精神科診療部長)[DMAT][DPAT][アルコール関連問題]

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