著: | 河野 和彦(名古屋フォレストクリニック院長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 312頁 |
装丁: | 口絵カラー |
発行日: | 2020年02月27日 |
ISBN: | 978-4-7849-4593-1 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
Ⅰ.総 論
A.いま伝えたいこと
1.こころを治す
2.物忘れは認知症,という思いをいったん断ち切る
3.医師は焦るなかれ。良性認知症というものがある
4.現場では,精密検査より患者の数─1,000例の患者が示すもの
5.「職人」たる臨床医のやるべきこと
6.医学書にあまり書かれていない重要な疾患
B.外来編
1.最初に押さえたい非認知症の実態
2.悪化予測因子の探索
3.進行速度で認知症を3グループに分類する
4.年齢を分けて考える
C.軽度認知障害(MCI)
1.鑑別診断と告知
2.MCI治療における激震─フランスにおける抗認知症薬の保険適用中止
3.目の覚める症例─認知症しか知らないままMCIを診てはならない
4.認知症の悪性,良性
5.予後を知るための重要な画像所見
Ⅱ.各 論
A.treatable dementia
1.内科系
1.甲状腺機能障害
2.ビタミンB12欠乏症
3.アルコール関連認知症(ARD)
4.糖尿病性認知症
2.脳神経外科系
1.慢性硬膜下血種(CSH)・水腫
2.正常圧水頭症(NPH)
3.側頭葉てんかん
3.医原性
1.薬剤性認知症
B.進行速度別分類
1.急速進行型認知症
1.失語系認知症(側頭葉障害)
2.前方型認知症
3.感染型認知症
2.緩徐進行型認知症
1.長寿系認知症
2.歩行障害系認知症
3.平均進行型認知症
1.覚醒系認知症
2.意識障害系認知症
C.記銘障害型物忘れ
1.注意欠如多動性障害(ADHD)
2.ADHDと他疾患の合併
Ⅲ.認知症,発達障害に対するReCODE法,ケトン・トリートメントの効果
1.患者さんにダイエットをしてもらった
2.ケトン食実例集
3.高齢者の滋養
Ⅳ.コウノメソッドの禅問答─もやもやした疑問を解決!
レビー小体型認知症はアルツハイマー型の親戚なのか?
認知症を伴うパーキンソン病とレビー小体型認知症は同じものか?
認知症患者がサプリメントを利用することに意義はあるのか?
認知症の中核症状を治せなくても医療の勝利と言えるか?
認知症のうつ状態は,大うつ病の合併なのか?
大人の発達障害が認知症になるとどうなるのか?
発達障害の鑑別診断で,怒りっぽい方は自閉症スペクトラムか?
欧米でピック病という病名が軽視されるのはなぜか?
側頭葉てんかんが認知症専門医の間であまり知られていないのはなぜか?
エビデンス主義と個別医療は,共存できないのか?
アルツハイマー型認知症は食事で改善できるのか?
コラム
アルツハイマー型認知症発症に関わる日本人特有の遺伝子変異を発見
アルミニウム鍋への疑問─アルツハイマー,ピック,発達障害に関与か
甲状腺機能亢進症にはメチルフェニデートを処方できない
食事療法のプロローグ
白澤式ダイエットとの出会い
MCIに中核薬を使うとかえって悪化する
てんかんによる交通事故
成書とは何か。エビデンスとは何か
あとがき
索 引
本書のテーマ
● 前著『コウノメソッドでみるMCI(軽度認知障害)』において,MCIには発達障害,てんかん,うつ病圏が迷入しており,「認知症専門医」ではMCIの患者群に1割以上の誤診を生じることを報じた。病状が進行してから受診する患者が多かった時代と異なり,MCIでの受診者が増える現代,精神科の知識が必要となった。
● 開業医は画像機器という武器を持たないが,こうしてみると,問診や簡単な診察室での検査でも鑑別診断できる患者が増えてきたと考えてよい。この時代の変化は,検査偏重の大病院には深刻で,現場開業医にとって明るいものととらえてほしい。
● MCIの主役は,アルツハイマー型認知症(ATD)の前駆状態ではなく,実はMCI期間が長い神経原線維変化型老年期認知症(SD-NFT)である。この患者には抗認知症薬は不要なケースもあり,抗酸化物質がQOLを維持,改善する。また発達障害の気質を残す高齢者を正しく診断する能力は,時代が要請する課題であり臨床医がそれを身につけることは急務である。
● 病理組織でしか確定できない認知症であっても,臨床医はその尻尾をつかまなければならない。その理由は,「今後どんどん進行します」というムンテラをしてしまうことには問題が生じるからである。本書では,初診時にATDとSD-NFTが鑑別できるような指標を探索した結果を示す。
● 本書で,次のステップに乗り出したテーマは,MCIの時期に患者の将来を予期する方法の探索である。認知症を急速進行型,平均進行型,緩徐進行型にタイプ分けした。
● このように,認知症にも良性がある。フランスが抗認知症薬を保険適用から外したことは,当たらずとも遠からず,である。しかし患者は治してほしいから来院したのであり,保険薬以外で治す方法を医師は提示する義務がある。それは抗酸化系などのサプリメントである。
● さらに,認知症の医学書にあまり記載されていない疾患をなるべく多く掲載した。側頭葉てんかん,もともとの患者の特性(発達障害),レビー小体型認知症(DLB)に潜む精神病の影について,本書で解明してゆく。
● 患者の高齢化によって認知症責任疾患の重複,認知症+精神病,認知症+発達障害という解析困難なケースが増えている。そうなると神経幹細胞やiPS細胞の実用化までのつなぎとも言われるこの時代には本質的治療などというものはない。臨床が信頼される基本は,確かな周辺症状のコントロールである。
● コウノメソッドは,対症療法を基本とした処方をするので,患者がいかなる疾患であっても誤治(中国医療の概念)は起こさないよう設計されている。ただ,認知症と非認知症では賦活すべき神経伝達物質が大きく異なるため,できるだけ鑑別できたほうが,治療成績は効率よく上がる。
● 抗認知症薬の投与で,介護がしにくくなるのであれば,受診したことが害になりかねない。ほかの領域に比べて認知症医療は国民の期待を最も裏切っている領域と言われている。検査に費用がかかり,しかも改善しない。
● 中核症状の正しい治療とは,患者の病名ではなくいかなる神経伝達物質がどれほど欠乏し,どのようにアンバランスになっているかをイメージして,用法用量にとらわれないテーラーメイドの処方を,各患者に出すことである。しかも処方は時々刻々変わってしかるべきである。エネルギーの波,躁うつの波,意識レベルの波がある患者には特にそうである。
● 厚生労働省は,医療費削減の意味も含めて,臨床医にサプリメントへの理解を高めることを期待している。保険薬を処方しないと医者らしくない,サプリメントを勧めるのは儲け主義だと思われる,と自分の立場を心配するのではなく,加齢による病態に対してすら病状を改善させようとする気迫と勉強が必要である。一部のサプリメントは,既に医師が推奨するだけの科学的根拠を有する。
● ATDに対する治療プログラム:ReCODE法(Dale E. Bredesen)が中心に据えている食生活指導であるが,わが国では医師への臨床栄養学の教育が足りないと言われる。認知症・発達障害に共通した治療法であるケトン・トリートメントについても記載した。特にMCIの時期に何をなすべきか,という重大なテーマとなる。
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。