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【識者の眼】「ギャンブル依存などの人の内面について」堀 有伸

No.5217 (2024年04月20日発行) P.60

堀 有伸 (ほりメンタルクリニック院長)

登録日: 2024-04-02

最終更新日: 2024-04-02

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依存症の患者については、「依存症の部分以外はまともで、むしろ普通よりしっかりしている」ような印象を持つことがあります。患者として医者を頼ってくれる面が少なく、いつまでも警戒されているような気がして、依存症患者と関わることに苦手意識を持っている精神科医も少なくありません。

普段のキチンとしているところと、依存症の症状が出たときのギャップが大きく、周囲の人を戸惑わせます。この矛盾は、その人の内面に「その人を常に監視し、厳しい視点で叱責して高い水準を維持するように強制するイメージ」が働いていると想定すると、理解しやすくなります。古典的な精神分析の呼び方なら「強力な超自我が存在する」というところです。

その超自我からのプレッシャーが大きいので、常に緊張していますし、その分、疲労や不満を抱え続けることになります。これは恐ろしいことで、誰も自分自身から逃げることはできません。溜まりに溜まった緊張は、どこかで発散させなければならなくなります。しかし、人前でそれができないとなると、こっそりと人目につかない場所で、ギャンブルや薬物に走るのです。

その人たちは、心の奥底から人を信じて頼ることができず、「弱みを見せたら他人につけこまれてひどい目に遭う」と信じているので、失敗を人に告白して、助けを求めることができません。噓に噓を重ねることになります。その結果、身近にいる人を裏切り、相手を深く傷つけることもあります。それによって自己評価がさらに低くなるという悪循環が進むようになると、そこから抜け出すことが容易ではなくなります。

そのような人々はどうすれば自分の傷ついた弱みをさらけ出せるようになるか。治療的にはそういうことを考えます。一方で、「治そう」とする人も裏切られることがありますし、本人の逸脱的な行動に歯止めをかけることも必要です。その辺りのバランスを取りながら進めるのは大変困難なのですが、少しずつそれに対して有効な枠組みが考えられ、実践されるようになっています。「罰を与える」ことだけで取り締まろうとするアプローチは、依存症の人の内面にある過酷に責め立てる部分を強化することにつながるので、その有効性が厳しく検証されています。

堀 有伸(ほりメンタルクリニック院長)[自己への責め立て[他人への信頼]

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