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【識者の眼】「スウェーデンの女医さんにインタビューしてみた②─なぜ民間医療施設を選んだのか」渡部麻衣子

渡部麻衣子 (自治医科大学医学部総合教育部門倫理学教室講師)

登録日: 2024-07-25

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さて今回は、インタビューにお答えくださったAnnaさん(仮名)が、スウェーデンでは珍しい開業医の施設で働くことを決めた理由をお伝えしようと思います。

Annaさんは、9人の医師(専門医5人、研修医3人、インターン1人)と、5人の看護師、2人の准看護師の働く、小さな民間の総合医療専門クリニックで、専門医の1人として週に3日働いています。Annaさんは、スウェーデン南部の公営総合病院で総合医療専門医(General Practitioner:GP)として研修を終えた後、しばらくスポットのアルバイトを続ける中で今の病院に出会いました。ここなら働ける。そう思って院長に直談判し、正規雇用で働かせてもらえることになったそうです。

「ここなら」と思った背景には、スウェーデンのGPの置かれた一般的な状況があります。スウェーデンでは、病気になったらまず、登録しているGPの診察を受けます。単純に言えば、約1000万人の国民を約6000人のGPで割り振ることになるため、医師1人当たり1600人を受け持つ計算です。スウェーデン医療ケアサービス分析局の報告(右記QRコード)によると、スウェーデンのGPの3分の2が仕事を「とても」または「非常にとても」ストレスに感じており、この割合は調査対象となったどの国よりも高いそうです。この報告ではさらに、診察時間が短いこと、書類作成時間が長いことが重要なストレス要因であることが示されました。多くの患者を受け持ち短時間で診察し、多くの書類を作成するGPは、より高いストレスを抱えると言えます。まさに、5年の間に次々に同期が辞め、最後は指導医まで精神を病んで休職してしまった、Annaさんの研修医時代の経験に当てはまります。

今、Annaさんが働くのは、10年前にGPへの登録が自由化されたのを機に3人の女性医師が設立した病院で、働き方に配慮した運営が特徴です。15時には診療を終え、その後1時間を書類作成にあてます。「仕事は面白い」「対面の診療が重要だと考えていて、最近、医療施設を運営する民間企業が推進しているオンライン診療には懐疑的」と話すAnnaさんはとても生き生きしているように見えました。「いつか病院も見にきてね」と言って頂いたので、次は見学に行くのを楽しみにしています。見学できたら、ここでもお伝えしたいと思います。

渡部麻衣子(自治医科大学医学部総合教育部門倫理学教室講師)[GP][登録]

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