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【識者の眼】「世界敗血症デー9月13日〜敗血症の認知を高める活動」松田直之

No.5237 (2024年09月07日発行) P.60

松田直之 (名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野 教授)

登録日: 2024-08-28

最終更新日: 2024-08-28

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敗血症(sepsis、セプシス)は2016年より国際的に、感染症において臓器機能不全が進行する病態と定義されている1)2)。一方、敗血症は感染症の1つの表現型であり、熱型変化、頻呼吸、咳嗽・低酸素、頻尿などの感染症を疑う所見があることが前提となる。その上で、quick SOFA1)として、①呼吸数≧22回/分、②意識変容、③収縮期血圧≦100mmHgを評価し、このうち2つ以上を満たす場合に敗血症を疑う。

2024年4月より、厚生労働省第8次医療計画としての5疾病6事業が開始されているが、この5疾病である、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患、そして救急医療、災害医療を含む6事業において、敗血症は全身状態を悪化させる侵害刺激として注意が必要な病態である2)。救急外来の整備においては、このような病態悪化の修飾因子としての感染症と敗血症の教育が重要となっている。

しかし、この敗血症という病態名が世界的に流布されるようになったのは、2012年以降と考えてよい。2000年代においても敗血症は予防可能な病態の1つであったが、2010年のメリノフシンポジウムにおいて「Sepsis Speaking with One Voice」の宣言として、世界敗血症同盟(Global Sepsis Alliance:GSA)の発足3)がきっかけとなった。それまで敗血症は、国内外において、政策立案者、医療制度リーダー、そして医療当局に熟知されないものだった。

GSAは、2012年より毎年9月13日を世界敗血症デー(World Sepsis Day)と定め、そして2017年には世界保健機関の世界保健総会(World Health Assembly:WHA)において「敗血症を保健上の最優先課題とする」という議決をもたらした。

以上の背景をふまえて、GSAは2024年の世界敗血症デーの前日となる9月12日に、2030 Global Agenda for Sepsis(2030世界敗血症アジェンダ)を国際的に発表する予定である。国連加盟国の協調的な取り組みとして、敗血症による人々、社会、医療、経済における負担を軽減することを目的としている。「2030世界敗血症アジェンダ」の最終目標は、敗血症の治療がより強固なものとなるよう、保険診療に位置づけ、医療現場における敗血症という緊急への対応能力を強化することにある。子ども、女性、そして男性の何百万人もの予防可能な死亡と後遺症を回避することが目標である。日本では2024年、以上の内容を含めて、9月8日に京都駅4階室町小路広場で、「世界敗血症デー京都2024」4)を予定している。多くの参加を期待したい。

【文献】

1)Singer M, et al:JAMA. 2016;315(8):801-10.

2)松田直之:ICUとCCU. 2023;47(3):181-9.

3)松田直之:医事新報. 2023;5184:59.

4)世界敗血症デー京都2024.
https://sites.google.com/view/wsd-2024kyoto

松田直之(名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野 教授)[敗血症の最新トピックス㊾][感染症]

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