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【識者の眼】「令和時代の医療大転換期─思考理解への助言⑤」守上佳樹

No.5240 (2024年09月28日発行) P.64

守上佳樹 (よしき往診クリニック院長、一般社団法人KISA2隊OYAKATA)

登録日: 2024-09-11

最終更新日: 2024-09-10

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時代は令和に入り、医療の「大転換期の大詰め」を迎えている。このような時代の全体思考の一助になればと考え、話題を提供したい。

前回までの①〜④に加え、今回は「地域医療格差」の話題を取り上げたい。

日本の人口分布問題は患者側だけでなく、東京一極集中という言葉に引き続き、100万人規模の中核都市での医療介護事業の展開と、過疎化の進む都市群の展開では最初の一歩から異なるアイデア、方法でのアプローチが必要と言われている。

しかし、いずれもはるか先の展望まで考慮に入れることが必要で、自分がいなくなってもその地域の医療介護で困る人がいないように、と公益性、公共性の高いプロジェクトを展開する秀逸な視野が必要と感じる。

各地のモデルケースはあれ、画一的なケースの分配が通用しない中、チームKISA2隊の活動の中で様々な地域に足を運んで、各地域医療包括ケアの展開を勉強させて頂いた。その中でも、特に島根県のプロジェクトは大変勉強になった。

2023年度に島根大学医学部附属病院総合診療医センターの和足孝之先生(現京都大学医学部附属病院 総合臨床教育・研修センター准教授)とのリーダー対談1)という過分な取材依頼で伺った。島根大学の総合診療チームの圧倒的な計画力と行動力は、次世代の医療展開を秒で理解させられるほどで、是非とも若手の医療介護者たちにも共有すべきと思われる。

決して中核都市のど真ん中にキャリアの答えがあるわけではない。

ともすれば「わが県に」「わが市に」という言葉が多く聞かれる比較的医療格差が問題となる地域であっても、島根を牽引する若手リーダーの坂口公太先生の口からは、人財を「とにかく越境」させてどんどん必要な経験を積んでもらうのだ、と真逆のコメントが様々な瞬間に飛び出していた。

医療崩壊や人員不足のネガティブな話題からの行政マネタイズに傾倒しがちな地域現場が多々ある中で、プロジェクトによって人々を魅了し、行動によって納得させ、結果で地域医療を達成しようとする医療人財はまだまだ日本に埋蔵されていると強く感じる。

日本医事新報の記事内ではとてもその活動を紹介しきれないが、幸運なことに多数ネットで閲覧できるので、島根県発・総合診療医養成プロジェクトを参考にしてみてほしい。既にGOOD DESIGN賞を受賞され、多数の取材を受けられているが、前回までと合わせて、医療格差問題には人口減少と高齢化が同時フェイズでせまりくる2025〜45年頃まで、さらにこういった一石を投じる活動からのエッセンスの吸収には襟を正して注視すべきである。そして、できれば現地で直接彼らの言葉を聞いたほうがよい、と考えている。

【文献】

1) 和足孝之, 他:ジェネラリスト教育コンソーシアム. 2023;19:6-10.

守上佳樹(よしき往診クリニック院長、一般社団法人KISA2隊OYAKATA)[地域医療格差][大転換期][チーム医療][KISA2隊がんばれ島根

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