最近、治安が悪化しているような印象があります。それは、首都圏を中心に、SNSというソーシャルメディアを通じて集められた集団による強盗事件が多発しているからではないかと思います。
特殊詐欺は、被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪の総称です。2023年の特殊詐欺の認知件数は1万9038件、被害額は452.6億円で、被害は大都市圏に集中しています。検挙件数は7212件、検挙人員は2455人(そのうち少年は431人、割合は17.6%)で、受け子や出し子、それらの見張り役の検挙人員は1856人です。少年の検挙人員の71.9%(310人)は受け子で、受け子の総検挙人員に占める割合は19.8%と、未来ある若者が犯罪に手を染めている状況がうかがえます。
近年、SNSなど緩やかな結びつきで離合集散を繰り返す犯罪グループが特殊詐欺等を広域的に敢行し、治安対策上の脅威となっています。これらの犯罪グループは、つながりが流動的で、匿名性の高い通信手段等を活用しながら役割を細分化し、違法な資金をもとにさらなる事業活動に進出します。活動実態を匿名化・秘匿化するため、警察は、これを「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」と位置づけて取り締まりを進めています。
今、若い人たちがアルバイトを探すとき、スマホのアプリを通じて気軽に探すことができます。正規のアルバイト募集の中に闇バイトや犯罪グループの活動が混じっていたとしても、「ホワイト案件」「高収入」などの文句に惑わされ、見分けるのが難しくなっているのかもしれません。
2024年11月、オーストラリアでは、SNSを通じて子どもが有害なコンテンツに接する等の懸念から、議会が16歳未満の子どものソーシャルメディアの使用を禁止する世界で最も厳しい法律を承認しました。これにIT企業が従わない場合は、最高5000万豪ドルの罰金が科される可能性があります。
一方、日本では、青少年のインターネット利用を巡る取り組みは「青少年インターネット環境整備法・関係法令」で定められています。しかし、今のところ、青少年が安全・安心してインターネットを利用できる環境の整備等について検討を行っている段階です。
SNSの利用にはメリットとデメリットがありますが、インターネットの世界は進化がとても早いため、特に子どもたちへのSNS対策は喫緊の課題と言えるでしょう。利用しはじめの子どもたちのSNSの使い方については、オーストラリアのように一律に禁止するだけではなく、大人がしっかりと使い方や危険性について指導・教育することで、将来トラブルに巻き込まれるリスクを防ぐことができます。そのために、私たち大人自身も、インターネットやSNSの危険性について十分理解し、メディアリテラシーを身につけていきましょう。
松﨑尊信(国立病院機構久里浜医療センター精神科診療部長)[SNS][特殊詐欺][トクリュウ][青少年][法律]