中央社会保険医療協議会(中医協)薬価専門部会は、2024年12月20日、「2025年度薬価改定の骨子」のたたき台を了承した。これにより、2025年度の中間年改定(毎年改定)は予定通り実施されることが決まった。
今回の改定の基礎となる薬価調査では、薬価の平均乖離率が5.2%であることが確認された。過去2回の中間年改定では、対象範囲の乖離率が製品カテゴリーに関係なく一律に0.625倍とされたが、今回は、新薬創出加算品と後発医薬品は平均乖離率の1倍(5.2%超)、長期収載品は0.5倍(2.6%超)など、医薬品のカテゴリーごとに設定された。さらに、今回の改定では、最低薬価の引き上げや新薬創出加算とその累積額控除も行われる。この結果、2025年度薬価改定により薬剤費削減額は2466億円と見込まれている。
中間年改定が導入されて以降、製薬業界、医師会、薬剤師会は、中間年改定の廃止を強く求めてきた。一方で、2022年9月〜23年6月にかけて開催された「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」(以下、「検討会」)の報告書では、薬価差の発生要因として、公定価格のもとで自由取引されることで、どうしても薬価差が生じうることに加え、流通慣行の問題が指摘された。特に、共同購入組織や価格代行業者の存在が問題視されたが、現在はさらに医薬品流通が複雑化している。
今回の平均乖離率は、5.2%であり、2022年度の7.0%、2023年度の6.0%と比べ、着実に下がっているように見える。しかし、流通慣行の複雑化により、調査結果が実態を正確に反映していない可能性が懸念される。具体的には、大手薬局チェーンが医薬品卸や販社を傘下に収め、二次卸を介入させることで薬価調査上の納入価を高く見せる一方で、一次卸と二次卸間の価格差をチェーン全体の収益に計上する仕組みが存在している。このためか、このところ薬局チェーンによる卸の子会社化が進んでいる。
薬価差の存在については、検討会でも意見がわかれた。しかし、薬価差の原資が、国民が支払う社会保険料や税金であることを考えると、薬価差益を薬局や医療機関に温存する仕組みは望ましくないとの指摘もあった。検討会では中間年改定の見直し(廃止)は提言されなかったが、薬価差益を国民に還元するためには、中間年改定の議論と並行して、チェーン薬局を中心とした流通慣行の適正化と価格形成の透明性向上が重要であると考えられる。
坂巻弘之(一般社団法人医薬政策企画P-Cubed代表理事、神奈川県立保健福祉大学シニアフェロー)[薬価改定]