年の瀬も押し迫った2024年12月27日、ある医療事故事例に大きな動きがあった。兵庫県の赤穂市民病院で医療事故を起こした元脳外科医が、業務上過失傷害罪で在宅起訴されたのだ。
起訴によって実名報道となった。裁判がどうなるか改めて注目していきたい。
赤穂市民病院は私がかつて勤務した病院でもあり、起訴された元脳外科医と面識もあるので、自分ごととして深く受け止めている。メディアの取材も基本的には断らず引き受けており、いくつかの報道機関で取り上げられた。
赤穂民報:《市民病院医療事故多発》「膿出し切る必要」現役医師が提言
“手術で神経を切断、透析をせず体調が悪化…医療ミスをくり返す医師を「なぜ病院は雇い続けるのか?」その背景とは?
こうした取材を通じて訴えたかったことは、これを、医療事故を繰り返し引き起こす「リピーター医師」だけのせいにするのではなく、医療安全を向上させることにつなげ、再発防止をするべきだということだ。
しかし、どうもSNS上の反応は、リピーター医師を厳罰に処せという声が多い。確かに当該医師の責任は重い。しかし、その背景にある問題を修正し、より安全な医療環境をつくることが不可欠であることに言をまたない。
残念ながら、本連載で繰り返し書いてきたように、日本の医療事故調査が処罰に傾いたものになっており、安全な医療環境をつくるという方向に向かっていない。このままでは、同じような事故が繰り返される可能性がある。
2025年は、こうした状況に終止符を打つとまでは言わないものの、改善の一歩にしたい。原因究明と処罰、責任追及を切りわける医療事故調査の実現に向けて、私も動いていきたい。
1月26日には、本連載でも触れたISO5665の成立に尽力した方々をお招きして集会を開催する。関心のある方はぜひご参加頂きたい。
榎木英介(一般社団法人科学・政策と社会研究室代表理事)[医療事故調査][医療安全再生]