編著: | 雨森正記(弓削メディカルクリニック院長) |
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監修: | 西村真紀(川崎セツルメント診療所所長) |
判型: | B6判 |
頁数: | 290頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2019年03月05日 |
ISBN: | 978-4-7849-4816-1 |
版数: | 第1版 |
付録: | - |
Ⅰ章
①診断エラー
②polypharmacy
③multimorbidity
④グループ診療
⑤多職種連携
⑥主治医機能の落とし穴
Ⅱ章
①開院前に不用な医療機器を買ってしまった
②紹介した患者さんが帰ってこない
③複数の医師がいて同じ疾患でも治療方針が違う
④検査結果の見間違い、カルテの入力間違い
⑤スタッフを採用したあとに、こんな人だったのか
⑥家庭血圧を測定してもらえない
⑦血圧が高くコントロール不良だったら二次性高血圧だった
⑧糖尿病の合併症のチェックが抜けていた
⑨糖尿病でみていたら膵癌だった→慢性疾患で定期通院している患者さんに進行胃癌が見つかった
⑩C型肝炎で検査が抜けたら肝癌を発症していた
⑪脂肪肝と思っていたら肝癌を発症していた
⑫39歳女性の腹痛に造影CTを撮ったら…
⑬胃腸炎だと思っていたらシガテラ中毒だった
⑭湿疹と思ってステロイド軟膏を出したら、膿痂疹、ヘルペスだった
⑮子供のかぜと思っていたらクループで搬送された
⑯若い女性に聞きそびれたら性感染症だった
⑰ずっと診ていた患者さんのParkinson症状がわからなかった
⑱DV疑いなんだけどどこへつなげたら?
⑲救急外来で大丈夫と思って帰したら、直後に救急搬送された
⑳認知症の患者さんの他の病気の診断ができなかった
㉑薬が重複されて処方されていた
㉒薬のコンプライアンスが悪い
㉓糖尿病で通院が途絶えていた
㉔うつ病患者の紹介タイミングがわからない
㉕向精神薬で転倒骨折された
㉖薬の副作用を見逃した
㉗健診を受けていなかった
㉘予防接種の間違い
㉙患者会が続かない
㉚学校医の健診に行くことになったけど
㉛携帯電話が通じなかった/すぐに往診してもらえなかったと言われた
㉜終末期の方が、あわてて救急車を呼んで搬送されてしまった
㉝訪問診療で家族の病気に気づかなかった
㉞患者に「聞いてない」と言われた
㉟研修医が来てくれたがなにを教えたらよいのかわからない
㊱スタッフ教育になにからはじめたらよいか
㊲地域住民からの講演依頼どうしたらよいか
「私,失敗しないので」と言う医師はテレビの中だけの存在で,多かれ少なかれしくじりを経験しない医師はいない。期待しない結果になったものが,何らかのミスによるものではないかと報道され医療訴訟に発展することが多くなっているという。問題とされることの90%以上はミスでもないとの指摘もあるが,臨床医を行ううえではどうしても苦い経験は避けられないものである。
今から300年余り前に対馬藩に仕え,日本と朝鮮との間の交渉に当たった儒学者である雨森芳洲先生(私と遠縁にあたる)には,最初医師の道を志したが,修行中に師匠である医師から「学者は紙を費やし,医師は人を費やす」という言葉を聞き,医師から学者へ転向したという逸話が残っている。当時から,良い医師となるには,多くの患者でしくじりながら学んでいかなければいけないという教えがあったのに違いない。
30年ほど前に,ある医療系の雑誌の中で,高名な医師が,若い頃に経験した苦い経験を語るという連載があった。当時の医学会で活躍されていた高名な医師でも起こしてしまった苦い経験はまだ駆け出しであった自分には実に興味深く,印象的な企画であった。ときを経て自分も診療所で30年経験した中で,よかったことより「しくじり」の経験のほうがはるかに記憶に残っている。またその経験がその後の診療,経営には大いに役立ってきたことは間違いない。
今回,若手の医師とベテランの医師とを結ぶような書籍をつくるということを提案され,若い方の経験されたしくじり,失敗談に対してベテランの先生がコメント頂くというこれまでにはなかった企画が思い浮かんだ。若い医師にとってはsignificant eventでもあり書きにくいこともあろうかと思われたが,多くの先生方に賛同いただき経験の提示を頂いた。またベテランの医師もおそらく同様の経験をされているものと思われ,暖かいコメントをいただいた。誠に感謝している。
この書を参考に,多くの方に,他人のしくじりを他山の石とせずに自分の診療にいかせて頂ければ幸いである。企画についてご協力いただけた日本医事新報社編集部の各位とこれまで日本プライマリ・ケア連合学会の生涯教育セミナーにおいて各種の講演をいただいた先生方,熱心に討論に加わっていただいた参加者の先生方に御礼申し上げる次第である。
2019年2月
雨森正記
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。