小倉和也 (NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)
登録日: 2025-01-16
最終更新日: 2025-01-16
石破総理大臣は1月6日年頭会見の中で、明治以後の「強い日本」、戦後の「豊かな日本」に続き、第3の日本として「楽しい日本」をつくり上げていきたいと表明した。「世界平和の下、全ての人々が安心と安全を感じ、多様な価値観を持つ一人一人の国民が、『今日より明日は良くなる』と実感し、自分の夢に挑戦し、自己実現を図っていける、活力ある国家」をめざすという。
この理念は、会見でも言及された地域共生社会の理念「制度・分野ごとの『縦割り』や『支え手』『受け手』という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会」にも通じる。
また、同じように国が提唱する、IoTやAIを活用して「少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題」を克服し、「社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合える社会、一人一人が快活で活躍できる社会」としての「人間中心の社会(Society 5.0)」の理念にも重なるものである。
これら3つの理念の後半部分はよく似通っており、前提としての部分が、「楽しい日本」では世界平和と安心・安全、「地域共生社会」では縦割りの打破と多様な主体の参画、「Society 5.0」ではIoTやAIなどのイノベーションによる課題克服、となっている。
世論調査会社イプソスの調査によると、残念ながら2025年が2024年よりもよい年になるだろうと楽観している人の割合は、日本が対象33カ国中最下位であり、2024年版の国連幸福度調査では、日本の30歳未満の若年層の幸福度は73位と先進国中最下位であった。
どうすれば、一人ひとりが幸福と希望を感じられる社会へと転換できるのか。その答えは先ほど述べた前提部分をいかに実現できるかにかかっているのではないだろうか。
世界平和と安心・安全な社会は、防衛や治安の維持だけではなく社会保障や経済の安定があってこそであり、そのためには医療・介護・教育などの分野における縦割りを廃した多様な主体の参画や時代に合わせた制度・文化の変革が必要だろう。また、革新技術を活かした少子高齢化や地方の過疎化、貧富の格差などの課題解決も同様に制度や文化の変革がなければ実現は難しいだろう。
地域という現場の課題は、国の制度や社会全体のあり方を現場の知を反映した形で変えていかなければ解決することができない。新たな知を現場からつくり出し、幸福と希望に満ちた「楽しい日本」に結びつけられるよう努めていきたい。
小倉和也(NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)[地域共生][イノベーション]