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【識者の眼】「多職種連携ツールはどう進化するか」土屋淳郎

土屋淳郎 (医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)

登録日: 2025-02-10

最終更新日: 2025-02-10

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「2025年問題」と言われた年がついにやってきた。超高齢社会に対し、地域包括ケアシステムの構築が必要と言われ、病診連携や多職種連携においてはICTを用いた連携が進んできた。

「地域包括ケアはシステムではなくネットワークである」「その中心は多職種連携である」1)とされている中で、とりわけ多職種連携ツールは、ソーシャルメディアの普及に相まって利用率も格段に増え、筆者が使うMCS(メディカルケアステーション)は、現在全国で28万人以上の医療介護職が利用し、そのネットワークは広まった。しかし2025年を迎えて、地域包括ケアシステムは構築できたのかと言えば、まだ道半ばと感じている。

では、これからはこの多職種連携ツールはどのように進化していくのだろうか。1つは以前から言われている他のシステムとの連携/連動だろう。多職種連携ツールの目的は主にコミュニケーションであるが、医療や介護の業務システムも利用しなければならない専門職はシステム間で同一の情報を取り扱うことも多く、今後は患者/家族のPHR(パーソナルヘルスレコード)利用も増えてくることを考えるとシステム連携の重要性は高い。URL連携やAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)連携に加え、最近ではRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)を用いた連携なども用いられ始めているので、システム連携の進化に期待は大きい。

そしてもう1つはAIの利用だろう。蓄積されたコミュニケーション情報を利用し、生成AIで目的に沿ったサマリーを作成してみると、短時間で完成しその精度も十分に満足できるレベルである。プロンプトと呼ばれる指示の仕方が重要ではあるが、既に実用レベルに達していると感じる。今後、指示書や報告書、診療情報提供書や主治医意見書などの書類作成に、生成AIの利用は欠かせなくなるだろう。

また、様々な事例を学習した予測AIを利用することで、より適切な医療・介護サービスの提供が可能になると考えられている。もちろん個人情報の取り扱いやハルシネーションといった事実と異なる情報を生成する現象など払拭されていない問題はまだまだある。しかし、働き方改革や人件費を含む物価高騰の中ではAIに頼らざるをえない流れになりそうだ。

何かと不安や課題も多い医療業界ではあるが、2025年の次の世代に向けて多職種連携ツールもさらなる進化が求められてくるだろう。

【文献】

1)二木 立:医事新報. 2020;5002:56.

土屋淳郎(医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)[2025年問題][多職種連携]

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