▼日本医師会が、研修医の日医会費を今年度から無料化した。医師賠償責任保険に加入しない研修医は会費を無料とし、加入する場合は保険料のみ(3万3000円)の負担に。医師資格証を無料で作成するほか、『日医ニュース』『日医雑誌』は電子書籍で提供するという。医師会組織は三層構造になっており、岩手、秋田、福島、富山、石川、鳥取の6県医師会は研修医の会費を既に無料化。日医はそれ以外の都道府県医師会、郡市区医師会にも検討を求めている。
▼研修医の会費無料化は、医師会の組織率向上を検討するなか実施が決定された。組織率向上の第一歩として、日医は非会員医師が医師会発の情報にアクセスするきっかけづくりを重視。これまでも医学生、研修医、勤務医に対象を絞ったさまざまな取り組みを行ってきた。研修医には、日医ホームページで利用登録するだけで会員専用ページ内にある全コンテンツの閲覧や提携ホテルの割引など医師会員のメリットを一部体験できるサービスを提供。医学生には無料情報誌『DOCTOR-ASE(ドクタラーゼ)』を発行し、すべての医学部に学生分を配布している。医学生との交流会や、地域医療の講義を医学部で行う都道府県医師会も多い。
▼さらに勤務医に関しては、過重労働や健康問題を考える勤務医中心の委員会を会内に設置。勤務医の働き方のガイドラインや、病院管理者が自院の勤務環境を確認できるチェックリストも作成した。これらは勤務医の間で根深い「医師会は開業医の利益追求団体」という見方を変えたいという想いから。10月には国の医療事故調査制度が施行されることから、今後は中小病院や診療所の院内事故調査の支援など医療安全への取り組みや、患者暴力・クレーム等のコンフリクト対策、医療訴訟への組織的支援を通じて、医師会は職能団体として「会員を守る」ことができるのかが問われることになるだろう。
▼政治力低下の懸念から、近年の日医代議員会では、保険医の指定を医師会が行う実質的な「全員加入」や、法的根拠を伴う完全な「強制加入」を求める声が繰り返し上がっている。ただ、日医会員でないと保険診療ができないというのは、独占禁止法との兼ね合いで具体化は難しいとみられる。一方、職務の適正な執行の確保という公共の要請が認められる以上、強制加入としても憲法が保障する職業選択の自由の規定には抵触しない、という指摘も。検討が最終的にどこに着地するか注視したい。